2025年度の税制改正において、「先端設備等導入計画」に基づく固定資産税の特例措置の期間が、2027年3月31日まで2年間延長されることになりました。
この特例措置は、企業の設備投資を後押しし、地域経済の発展や活性化につなげることを目的としています。
今回の延長によって、より多くの中小企業が最新の設備を導入し、生産性の向上を図ることが期待されています。
ただし、特例措置を受けるには、適用要件があります。
措置の対象となっている中小企業に向けて、固定資産税の特例措置に関する具体的な内容を解説します。
2025年度の税制改正は、多岐にわたる項目に及んでいますが、中小企業にとって特に注目すべきなのが、固定資産税の特例措置の延長です。
固定資産税の特例措置とは、「中小企業等経営強化税制」に基づく「先端設備等導入計画」に沿って取得した設備について、一定期間、固定資産税の課税を軽減する制度です。
従来は、2025年3月31日までに取得した設備が対象とされてきましたが、今回の改正により、その適用期限が2027年3月31日まで2年間延長されました。
そもそも中小企業等経営強化税制は、2016年5月に中小企業投資促進税制の上乗せ措置として創設されました。
中小企業投資促進税制は、中小企業が生産性を向上させる設備や、収益力を強化させるための設備などを取得した際に、その費用について特別償却や税額控除を認める制度です。
そのうえで、さらに企業の生産性向上や経営力強化を支援するために設けられたのが、中小企業経営強化税制ということになります。
それでは、今回の税制改正により延長された固定資産税の特例措置の中身を確認しておきましょう。
特例措置は「先端設備等導入計画」に沿って導入された設備に対して適用されますが、この先端設備等導入計画は、事業者が設備投資を通じて生産性の向上や業務の高度化を図るためのもので、市町村の認定を受ける必要があります。
先端設備等導入計画に含まれる具体的な設備としては、160万円以上の機械装置、30万円以上の器具備品、60万円以上の建物附属設備(家屋と一体となって効用を果たすものを除く)、30万円以上の測定工具および検査工具などがあげられます。
なお、これらの設備は、年平均の「投資利益率」が5%以上となることが見込まれるものでなくてはいけません。
投資利益率とは、投資によって得られた利益が、投資額に対してどれほど効率的だったかを示す指標のことです。
5%以上ということは、たとえば160万円以上の機械装置を取得する予定の場合、8万円以上の純利益が出せる見込みであれば、要件を満たしていることになります。
また、生産、販売活動などの用に直接供されるものであることおよび中古の設備は認められず、新品の取得でないと措置が受けられないことにも注意が必要です。
措置の対象となる事業者は、資本金の額または出資の総額が1億円以下の法人か、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人もしくは個人事業主です。
ただし、大企業の子会社など、一定の要件に該当する事業者は対象外となる場合があります。
対象の事業者は、市町村が策定している「導入促進基本計画」に適合したうえで、労働生産性を年平均5%以上向上させる先端設備等導入計画の認定を受ける必要があります。
計画の作成には、設備の導入目的や効果、導入後の具体的な数値目標などを詳細に記載する必要があります。
計画の内容が不十分な場合や、市区村の示す要件を満たしていない場合は、認定を受けることができません。
計画の作成にあたっては、中小企業診断士や税理士などの専門家の支援を受けながら、慎重に進めるようにしましょう。
計画の認定を受けた事業者は、「雇用者給与等支給額」を1.5%以上増加すると表明した場合、対象設備の課税標準が3年間、1/2に軽減されます。
雇用者給与等支給額とは、従業員に対して支払う給与・賃金などの総額を指します。
さらに、雇用者給与等支給額が3.0%以上増加することを表明した場合は、課税標準が5年間にわたり1/4に軽減されます。
今回の改正による固定資産税の特例措置の延長は、中小企業にとって設備投資を促進する絶好のタイミングとなります。
2025年4月1日から2027年3月31日までの間に、事業用として設備を取得する予定があれば、特例措置の適用を検討してみてはいかがでしょうか。
この機会を最大限に活用し、最新の設備導入を通じて、企業の競争力強化と持続的な成長を目指しましょう。
ただし、特例措置の適用を受けるためには、中小企業等経営強化法に基づく先端設備等導入計画の策定はもちろん、対象となる設備の要件や、申告手続きについても正確に理解しておく必要があります。
適用を受けるにあたって、不明な点や不安な点があれば、専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
※本記事の記載内容は、2025年6月現在の法令・情報等に基づいています。
不動産を活用した節税対策の一つとして「不動産の組み換え戦略」があります。
この戦略は、所有する不動産を売却し、その資金で別の不動産を取得することで、資産構成を最適化しながら税負担を軽減する手法です。
しかし、税制上の要件や関連するコストを正確に理解しなければ、期待した効果が得られない場合もあります。
今回は、相続税対策としての不動産組み換え戦略に焦点を当て、不動産の組み換えの基本から注意点までを解説します。
不動産組み換え戦略は、相続税評価額を低くしたり、不動産による収益性を向上させたり、税務特例の適用を利用したりすることで、節税効果を高めることを目的としています。
では、不動産の組み換えは、どのように考えていけばよいのでしょうか。
まずは、不動産の評価額に着目します。
評価額が市場価格よりも低い物件を選定することで、相続税の負担を軽減することができます。
2024年以降、タワーマンション節税対策が見直されたことで、新たな評価ルールが定められマンションの高層階の相続税評価額が引き上げられました。
このことで、以前より節税効果は限定的となりましたが、依然として、階層による価格差が大きい物件では、一定の節税効果を期待することができます。
続いて、評価減の特例を活用する方法があります。
不動産の組み換えによって、貸家建付地や小規模宅地等の特例などが適用できる物件を選定することで、土地評価額を減額できる場合があります。
たとえば、小規模宅地等の特例では、居住用や事業用の土地の評価額を最大で80%減額することが可能です。
不動産組み換え戦略を効果的に進めるためには、効果的な不動産選定と、不動産譲渡所得税などを考慮した対策が必要となります。
まず一つ目は、効果的な不動産選定です。
他人に貸し出しをしている賃貸不動産の場合、居住者がいるためその土地や建物を自由に使うことはできないことから、借家権割合として土地や建物の評価額が減額され、相続税対策として有効になります。
古い低収益物件を新しい高収益物件や空室リスクの低い物件に組み換えることで、資産価値の向上と税負担の軽減を両立することができます。
そのほかにも、小規模宅地等の特例の活用や、広大地評価などの方法がありますので、組み換えの目的にあわせて最適な方法を検討するようにしましょう。
そして二つ目は、コストの把握です。
不動産の組み換えには節税効果がある一方で、不動産譲渡所得税や、不動産取得時のコストが発生します。
不動産を売却した場合には、売却益に基づいて不動産譲渡所得税が課されます。
特に10年以上所有するマイホームについては、軽減税率の適用を受けられる「10年超所有軽減税率の特例(正式名称:マイホームを売ったときの軽減税率の特例)」が適用されるケースがあります。
この特例を活用することで税負担を軽減することができます。
また、不動産の組み換えには、不動産取得税や仲介手数料、登録免許税などの費用が必要となるため、これらの費用を把握しておくことも重要です。
不動産の組み換え戦略は、相続税対策として非常に有効ですが、税務リスクや物件選定の失敗が思わぬ負担を招く可能性もあります。
相続税制は頻繁に改正されるため、常に最新情報を把握し、資産状況に合わせた適切な対策を講じる必要があります。
不動産の組み換え戦略を成功させるためには、専門家のアドバイスを活用しながら計画を立てることで、効果的な節税と資産管理を実現することが期待できます。
※本記事の記載内容は、2025年5月現在の法令・情報等に基づいています。
従業員のスキルアップは、会社の効率化や企業価値の向上に欠かせません。
しかし、人材育成に割ける時間も費用も足りないという中小企業は多いのではないでしょうか。
そんな企業に向けて、ハローワークではさまざまな人材育成支援制度を提供しています。
ハローワークは、求職者への職業紹介だけでなく、企業の人材育成もサポートしており、これまでに多くの企業が支援を受けています。
ハローワークを活用した人材育成について、具体的な内容を紹介します。
ハローワーク(公共職業安定所)は、雇用の安定と促進を目的とする公的な施設で、求職者と企業のマッチングや雇用保険の手続きだけではなく、職業訓練やスキルアップ支援なども行なっています。
企業側は、これらの支援制度をうまく活用することで、従業員の能力を最大限に引き出し、組織全体のパフォーマンス向上につなげることができます。
近年、終身雇用制度の崩壊や技術革新の加速により、企業は従業員の能力開発に力を入れる必要性が高まってきました。
今後は、どの産業においても、ますます労働力が不足する見通しとなっており、人材の確保と育成は企業の最優先課題の一つといわれています。
このような状況下で、ハローワークが提供する人材開発支援は、企業にとって非常に有益なものとなります。
人材育成に取り組む企業に向けたハローワークの支援策は目的別に分かれています。
たとえば、人材育成全般の基盤を整備したいのであれば、「キャリアコンサルティング」や「ジョブ・カード」などの導入に対して、助成金などの支援を受けることができます。
キャリアコンサルティングとは、国家資格を持つ専門家が労働者のキャリアプランや能力開発に関する助言や指導を行う取り組みのことです。
ジョブ・カードとは、職業経験・スキル・資格・キャリアプランなどを整理して、見える化したツールのことで、従業員のキャリア形成上の課題の把握や、能力開発の推進などに利用されます。
助成金を受けずに従業員を育成するのであれば、「ハロートレーニング」「認定職業訓練」「若年技能者人材育成支援等事業(ものづくりマイスター)」といった制度の利用を検討しましょう。
ハロートレーニングとは、ハローワークが提供する育成制度の一つで、求職者を対象としたものだけでなく、主に中小企業に在職中の従業員を対象としたコースもあります。
ハロートレーニングのなかでも、在職中の従業員向けの「在職者訓練」は、業務に必要な専門知識や技能・技術の向上を図ることが目的となっています。
「ものづくり」の分野を中心に、設計・開発、加工・組立、工事・施工、設備保全などの実習を中心とした訓練が全国の「ポリテクセンター(職業能力開発促進センター)」などで実施されます。
在職者向けのハロートレーニングは、2~5日間と比較的短期間であることが特徴で、企業が独自に研修を実施するよりも費用を抑えられる場合があり、専門的な知識・スキルを持った講師から指導を受けられるというメリットもあります。
また、ポリテクセンターだけではなく、都道府県知事の認定を受けた職業訓練施設でも在職者向けの訓練を実施しており、こちらは建築・土木関係、金属・機械加工関係、理美容関係などが主な訓練科となっています。
社外施設で訓練を受けるのではなく、講師の派遣を受けたいのであれば、「ものづくりマイスター」の利用も検討してみるとよいでしょう。
ものづくりマイスターとは、製造系職種やIT系職種で働く中小企業の若年技能者および工業高校の生徒などを対象に、派遣された熟練技能者が実技指導を行う制度です。
制度を利用することで、熟練技能者の知識・スキルを若手技能者に継承できるのはもちろん、OJTだけではむずかしい高度な技能を効率的に習得することができ、組織全体の技能水準も向上します。
特に中小企業においては、熟練技能者の高齢化による技能継承が課題となっており、ものづくりマイスターの活用は有効な手段となるでしょう。
ほかにも、ハローワークでは人材育成費用のサポートを受けることができる各種助成金制度や、自発的に訓練に取り組む従業員への教育訓練給付金制度などが用意されています。
人材育成は、企業の持続的な成長に不可欠な要素です。
ハローワークの支援制度を積極的に活用し、従業員の能力を最大限に引き出すことで、組織全体のパフォーマンス向上につなげていきましょう。
※本記事の記載内容は、2025年5月現在の法令・情報等に基づいています。
通常、消費税の納税は、売上時に受け取った消費税から、仕入れ時などに支払った消費税を差し引いた金額を納めることになります。
ただし、場合によって、支払った消費税が受け取った消費税を上回ることがあり、その差額が還付されることがあります。
還付金を受け取ることで、一時的な資金不足を解消したり、新たな事業投資に活用したりすることができるようになります。
損をしないためにも、消費税の還付金について、その仕組みや対象などを解説します。
消費税の還付金とは、簡単にいうと「払いすぎた消費税として返ってくるお金」のことです。
消費税は、売上時に受け取った消費税から、仕入れ時などに取引先に支払った消費税を差し引いて計算します。
通常は売上時にかかる消費税の方が多いため、その差額を税務署に納めることになります。
しかし、ケースによっては仕入れ時に支払う消費税の方が多くなることもあります。
具体的な事例の一つが、「設備投資などで多額の課税仕入れを行なった場合」です。
設備投資を行なった場合、多額の課税仕入れが発生するため、還付を受けられる可能性が高くなります。
特に高額な機械や車両を購入した場合、店舗や工場を新築・改築した場合は、還付金額が大きくなる傾向にあります。
こうしたケースの場合、購入費用が高額になることで、消費税額も多くなるため、確定申告を行うことで支払った消費税の一部を還付金と
して受け取ることができるということになります。
ただし、土地のみを購入した場合、消費税は非課税仕入れとなり、また、居住用不動産賃貸業だけを営んでいる場合は、設備投資に使った課税
仕入れを課税売上割合で按分されることで課税仕入の額が非常に少なくなると思われるため、還付の対象にはならないので注意してください。
また、「輸出業を営んでいる場合」も還付金を受け取れるケースが考えられます。
輸出業を営んでいる場合、輸出売上は消費税が免税となるため、売上時に預かる消費税が少なくなります。
一方、国内での仕入れ時には消費税を支払っているため、還付を受けられる可能性があるということです。
たとえば、海外に衣料品を輸出している企業は、輸出売上について消費税が免税となります。
しかし、国内で仕入れた原材料や製造にかかる費用については消費税を支払っています。
この場合、確定申告を行うことで、支払った消費税の一部を還付金として受け取ることができます。
そして、「大幅な赤字となった場合」も還付金を受け取れる可能性があります。
売上が減少して、課税される売上が少なくなる一方で、仕入れの消費税が多い場合は、結果的に消費税の還付が発生することがあります。
消費税の還付を受けるためには、課税期間の終了後、原則として2カ月以内に消費税の確定申告書を作成する必要があります。
確定申告書には必要事項を記入し、「消費税の還付申告に関する明細書」や「課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表」などの必要書類とあわせて、税務署に提出しましょう。
税務署の審査後、問題がなければ、還付金が指定の口座に振り込まれます。
振り込まれるまでの期間は定められていませんが、各種審査や手続きなどで時間がかかる場合もあります。
一般的には、手続きをしてから、1~2カ月後には振り込まれるといわれています。
ただし、消費税の還付金を受け取れるのは、原則として「消費税の課税事業者」だけです。
課税事業者とは、原則として基準期間(法人の場合は前々事業年度、個人事業主の場合は前々年)における課税売上高が1,000万円を超える事業者を指します。
免税事業者に該当する個人事業主などは還付の対象とはなりませんが、2023年10月からはじまった「インボイス制度」では、免税事業者であっても「適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)」を選択すれば課税事業者になることができます。
また、簡易課税制度を選択している事業者は、原則として還付を受けることができません。
簡易課税制度とは、中小企業の納税事務負担を軽減するために設けられた制度で、売上高に一定の「みなし仕入率」を乗じて仕入税額を計算します。
対象外の事業者は、支払った消費税が多くても還付を受けられないので注意してください。
消費税の還付金は企業の資金繰りを改善するための有効な手段の一つです。
特に、設備投資を行なった場合や、輸出業を営んでいる場合は、還付を受けられるかどうか確認してみるようにしましょう。
※本記事の記載内容は、2025年4月現在の法令・情報等に基づいています。
税務・会計でお困りのことはどんなことでも斎賀会計事務所までお気軽にご相談ください。
事業活動において「収入」「収益」「利益」「所得」「益金」といった用語を頻繁に耳にします。
これらの用語は一見似ていますが、税務と会計においては異なる意味を持ち、それぞれの用語が自社の経営状況を分析するうえでの重要な指標となります。
正しく経営判断するためにも、経営者であればこうした言葉の意味を正確に理解しておかないといけません。
今回は、税務や会計に関連する業務で使用する用語について、解説します。
事業活動を遂行するうえでは、財務に関する業務が欠かせません。
「会計」と「税務」はどちらも企業の財務に関する業務の一つですが、それぞれ目的や役割が異なります。
会計は財務諸表の作成や情報分析などによって、組織の財務状況や経営成績を明確にし、株主や投資家といったステークホルダーに情報を提供することを目的としています。
一方、税務は税法や税制に基づき、適切に税金を計算して納付することを目的としており、所得税や法人税の計算、税務申告書の作成や提出などが主な業務となります。
会計と税務の違いを理解しておかないと、双方に関連する用語を勘違いしてしまう可能性があります。
たとえば、「収入」と「収益」は、事業者が経済活動を通じて得た成果の総額を指す似た概念の言葉ですが、収入は税務の文脈で使われることが多く、収益は会計に関連する用語として使われます。
収入は実際に手元に入ってきた段階で発生するのに対し、収益は取引が成立した段階で発生します。
したがって、企業が商品を販売して収益が発生したとしても、代金が掛取引で後日支払われる場合には、現金が入り収入として計上するタイミングと異なることが少なくありません。
そして、この収益から費用や損失を差し引いたものが「利益」となります。
利益は会計上の用語で、企業が経済活動やビジネスの結果として得られる金銭的な成果を指します。
たとえば、2万円の製品を仕入れて、10万円で販売した場合に、販売価格の10万円が収益となり、利益は仕入れ価格の2万円を差し引いた8万円となります。 費用は仕入れ価格の2万円です。
また、税務上の用語である「所得」も利益とよく似た概念ですが、所得は課税所得の対象となる収入(益金)から損金を差し引いたものを示すため、利益と所得の金額には差が生じるのが一般的です。
ちなみに、「損金」は事業を営むうえで必要となる経費のことを指す税法上の用語です。
事業活動によって獲得した収益から、費用や損失を差し引いたものが利益ですが、この利益は、さらに「営業利益」と「営業外利益」に分けられます。
営業利益とは、企業が本業としている事業の商品やサービスを販売することで得た利益を指し、売上高から売上原価を差し引いた「売上総利益」から、さらに「販売費および一般管理費(販管費)」を差し引いて計算します。
それ以外の方法で獲得した利益は営業外利益と呼びます。
企業が得る収益は商品の売買だけで発生するものではありません。
預金や貸付金からの利息や保有する株式からの配当金、株式や債券の売却による利益、建物や土地を他人に貸し出して得る利益なども含まれます。
こうした本業には直接関係のない営業外収益と、本業の売上を合計したものがその組織の収益となります。
ただし、本業の売上だけで収益を上げている会社であれば、売上と収益が同じ意味合いで使われることもあります。
また、税務上の用語である「益金」は、課税所得の対象となる収入を指します。
益金は収益と同じく売上や営業外収益などの企業が経済活動を通じて得た利益のことですが、会計上は収益でも株式の配当金や税金の還付金など税務上は益金として計上しないものもあるため、会計上の収益と完全に一致するわけではないことに注意が必要です。
多くの企業は、収益の増加を目指して事業を拡大し、利益率の向上のために効率化を図ります。
また、税金を最小限に抑えるために、所得を抑える対策にも注力しています。
経理担当者はもちろんですが、経営者がこれらの用語を理解することで、経営状況をより正確に把握し、適切な経営判断ができるようになるでしょう。
会計や税務の基礎知識を習得するためには、参考書やオンライン学習、実務ツールなどが効果的です。
※本記事の記載内容は、2025年3月現在の法令・情報等に基づいています。
税務・会計でお困りのことはどんなことでも斎賀会計事務所までお気軽にご相談ください。
事業者はその事業年度における収益と費用を計算して損益を割り出し、資産や負債を確定させる「決算」を行うことが法律で義務づけられています。
作成した決算書をもとに、法人税の申告などを行うため、原則として決算書に誤りがあってはいけません。
しかし、もし後になって過去の決算書に間違いが見つかった場合は、どうすればよいのでしょうか。
決算書の間違いは、「決算修正」という処理によって、さかのぼって修正することができます。
会計担当者であれば、知っておきたい決算修正の手順について説明します。
決算修正の科目は「前期損益修正」を使用
法人は事業年度の決算期に決算を行う必要があります。
決算業務の際に作成する損益計算書や貸借対照表などの決算書は、税金を納付するための決算申告に使用するため、定められた申告期限までに間に合うように作成する必要があります。
法人税などの申告期限は、原則として事業年度の終了日である決算日の2カ月後となっているので、遅れないようにしましょう。
基本的に、決算書には間違いがあってはいけませんが、まれに前期の決算書に誤りが見つかることがあります。
すでに確定している決算書でも、本来計上すべき収益や費用が計上されていないなどの誤りがあれば、「決算修正」といって、さかのぼって間違いを正す処理を行わなければいけません。
前期の損益計算の誤りは、当期の利益余剰金残高の増減といった影響を与えてしまうのがその理由です。
ただし、勘定科目の振り分けミスや負債科目の分類ミス、流動資産と固定資産の分類ミスなど、財務諸表の正確性に欠けるものの、損益計算に影響を与える誤りではないものは、決算修正を行わなくても問題ない場合があります。
決算修正を行う場合は、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」という基準に従いますが、中小企業に限り、「中小企業の会計に関する指針(中小会計指針)」や「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」といった簡便的な基準に基づく決算修正が適当とされています。
「中小会計指針」や「中小会計要領」で決算修正を行う場合は、「前期損益修正」という科目を使用します。
当期の損益計算書に前期のミスを計上してしまうと、正確性が保たれないため、この前期損益修正という特別な科目を使用するというわけです。
未計上の売上や余分に計上していた費用などが判明した場合には、修正した金額を前期損益修正益として貸方に計上し、未計上の費用などが判明した場合は修正した金額を前期損益修正損として借方に計上します。
また、資産や負債の移動の金額間違いがあった場合も決算修正が必要となり、修正した金額を資産または負債科目として、借方と貸方に計上します。
決算修正と税務署への修正申告はセット
決算修正によって損益計算に変化があると、すでに納めている税金の額も変わってしまうため、税務署に対して、過去の申告内容を修正する手続きを行わなければいけません。
納めた税額が多かった場合には「更生の請求」の手続きを行い、逆に納めた税額が不足していた場合には「修正申告」の手続きを行います。
更生の請求の手続きは、更正の請求書を所轄税務署長に提出するというもので、請求できるのは原則として、法定申告期限から5年以内とされています。
調査の結果、更生の請求が妥当なものであれば、納め過ぎている税金が還付されます。
一方、修正申告の手続きは、税金の不足分を追加で納めるためのもので、すでに還付を受けている場合は、差額を返還することになります。
修正申告を行う前に税務調査や税務署による更正指導などを受けてしまうと、「過少申告加算税」や「重加算税」などがかかる場合があります。
過少申告加算税は新たに納めることになった税額の10%、重加算税は35%の割合を乗じた金額になるので注意が必要です。
ただし、加算税の加重措置や軽減措置の適用がある場合は税率が異なります。
ペナルティによる課税額を抑えるためにも、前期の損益計算の誤りを発見したら、速やかに決算修正と修正申告を行うようにしましょう。
※本記事の記載内容は、2025年2月現在の法令・情報等に基づいています。
税務・会計でお困りのことはどんなことでも斎賀会計事務所までお気軽にご相談ください。
事業者はその事業年度における収益と費用を計算して損益を割り出し、資産や負債を確定させる「決算」を行うことが法律で義務づけられています。
作成した決算書をもとに、法人税の申告などを行うため、原則として決算書に誤りがあってはいけません。
しかし、もし後になって過去の決算書に間違いが見つかった場合は、どうすればよいのでしょうか。
決算書の間違いは、「決算修正」という処理によって、さかのぼって修正することができます。
会計担当者であれば、知っておきたい決算修正の手順について説明します。
決算修正の科目は「前期損益修正」を使用
法人は事業年度の決算期に決算を行う必要があります。
決算業務の際に作成する損益計算書や貸借対照表などの決算書は、税金を納付するための決算申告に使用するため、定められた申告期限までに間に合うように作成する必要があります。
法人税などの申告期限は、原則として事業年度の終了日である決算日の2カ月後となっているので、遅れないようにしましょう。
基本的に、決算書には間違いがあってはいけませんが、まれに前期の決算書に誤りが見つかることがあります。
すでに確定している決算書でも、本来計上すべき収益や費用が計上されていないなどの誤りがあれば、「決算修正」といって、さかのぼって間違いを正す処理を行わなければいけません。
前期の損益計算の誤りは、当期の利益余剰金残高の増減といった影響を与えてしまうのがその理由です。
ただし、勘定科目の振り分けミスや負債科目の分類ミス、流動資産と固定資産の分類ミスなど、財務諸表の正確性に欠けるものの、損益計算に影響を与える誤りではないものは、決算修正を行わなくても問題ない場合があります。
決算修正を行う場合は、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」という基準に従いますが、中小企業に限り、「中小企業の会計に関する指針(中小会計指針)」や「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」といった簡便的な基準に基づく決算修正が適当とされています。
「中小会計指針」や「中小会計要領」で決算修正を行う場合は、「前期損益修正」という科目を使用します。
当期の損益計算書に前期のミスを計上してしまうと、正確性が保たれないため、この前期損益修正という特別な科目を使用するというわけです。
未計上の売上や余分に計上していた費用などが判明した場合には、修正した金額を前期損益修正益として貸方に計上し、未計上の費用などが判明した場合は修正した金額を前期損益修正損として借方に計上します。
また、資産や負債の移動の金額間違いがあった場合も決算修正が必要となり、修正した金額を資産または負債科目として、借方と貸方に計上します。
決算修正と税務署への修正申告はセット
決算修正によって損益計算に変化があると、すでに納めている税金の額も変わってしまうため、税務署に対して、過去の申告内容を修正する手続きを行わなければいけません。
納めた税額が多かった場合には「更生の請求」の手続きを行い、逆に納めた税額が不足していた場合には「修正申告」の手続きを行います。
更生の請求の手続きは、更正の請求書を所轄税務署長に提出するというもので、請求できるのは原則として、法定申告期限から5年以内とされています。
調査の結果、更生の請求が妥当なものであれば、納め過ぎている税金が還付されます。
一方、修正申告の手続きは、税金の不足分を追加で納めるためのもので、すでに還付を受けている場合は、差額を返還することになります。
修正申告を行う前に税務調査や税務署による更正指導などを受けてしまうと、「過少申告加算税」や「重加算税」などがかかる場合があります。
過少申告加算税は新たに納めることになった税額の10%、重加算税は35%の割合を乗じた金額になるので注意が必要です。
ただし、加算税の加重措置や軽減措置の適用がある場合は税率が異なります。
ペナルティによる課税額を抑えるためにも、前期の損益計算の誤りを発見したら、速やかに決算修正と修正申告を行うようにしましょう。
※本記事の記載内容は、2025年2月現在の法令・情報等に基づいています。
税務・会計でお困りのことはどんなことでも斎賀会計事務所までお気軽にご相談ください。
源泉徴収は事業者が給与や報酬・料金を支払う際に、あらかじめ所得税の分を差し引いて、
本人の代わりに納付する制度です。
日本の税金徴収方法の一つで、会社や個人事業主は差し引いた源泉所得税を
原則として支払った月の翌月10日までに納付しなければいけません。
給与の支払いが発生している場合は、毎月差し引いた源泉所得税を納付することになりますが、
一定の条件を満たしていれば、特例によって納付の頻度を減らすことができます。
源泉所得税の『納期の特例』について、利用する条件などについて解説します。
源泉徴収の範囲と遅延などによるペナルティ
源泉徴収の対象となるのは主に給与所得ですが、
それ以外にも個人事業主やフリーランスなどの個人に報酬・料金を支払う場合にも、
支払い額から所得税分を差し引く必要がある場合があります。
所得税法で、以下の報酬・料金の場合に源泉徴収の対象となると定められています。
<個人の源泉徴収の対象となる範囲>
(1)原稿料や講演料など
(2)弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
(3)社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
(4)プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
(5)映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や
芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
(6)ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とする
いわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
(7)プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
(8)広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
事業者はこれらの報酬・料金や給与から所得税分を差し引き、翌月の10日までにまとめて納付する必要があります。
たとえば、6月に給与の支払いを行なったとしたら、その分の源泉所得税の納付は翌月の7月10日までになります。
このように源泉所得税を納付する義務がある事業者のことを「源泉徴収義務者」と呼びます。
もし、納付が期限までに間に合わなかったり、漏れがあったりした場合には、
源泉徴収義務者がペナルティとして「不納付加算税」を納付しなければいけません。
不納付加算税とは納付すべき所得税額の10%が徴収される加算税のことですが、
遅延した後からでも自発的に源泉所得税を納付すれば5%に軽減されます。
また、災害や交通の遮断、もしくは納付の委託を受けた金融機関の事務処理のミスなど、
源泉徴収義務者側に遅延の責任がない場合は、ペナルティを受けることはありません。
『納期の特例』の仕組みと申請の方法
給与から差し引く場合は原則として毎月、源泉所得税を納付することになりますが、
事務負担の軽減のため、給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者であれば、
源泉所得税の『納期の特例』を利用することができます。
納期の特例を使えば、給与や退職手当、税理士などの報酬・料金から徴収した源泉所得税について、
1月から6月までの分を7月10日までに、
7月~12月分を翌年の1月20日までと、年2回にまとめて納付することが可能になります。
半年に1度の納付になることで事務負担は減り、納付遅延のリスクも少なくなります。
ただし、1度に納付する額が大きくなるため、資金繰りには注意しなければならず、
源泉徴収として預かった額を半年間はキープしておく必要があります。
また、納期の特例の対象となるのは、「給与や退職手当、税理士などの報酬・料金から徴収した源泉所得税」に限定されます。
給与以外は、前述した「個人の源泉徴収の対象となる範囲」の(1)~(8)のうち、(2)の報酬・料金しか認められていません。
それ以外の報酬・料金は原則として支払った月の翌月10日までに納付する必要があります。
そして、納期の特例を受けるには、承認に関する申請を行う必要があります。
申請は国税庁のホームページにある「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」に必要事項を記入して、税務署に提出します。
提出時期は特に定められておらず、提出して承認を受けた翌月に支払う給与などから適用されます。
たとえば、9月に申請書を提出した場合、翌月の10月から適用がスタートし、
10月から12月までの分を翌年の1月20日に納付することになります。
なお、すでに源泉所得税の納付を滞納したり遅延したりしている源泉徴収義務者は、特例の承認が受けられない可能性があります。
また、承認を受けている源泉徴収義務者も、納付期限に間に合わないと承認が取り消されることがあるので注意してください。
さらに、給与の支給人員が常時10人以上になった場合は、条件から外れてしまうため、納期の特例が受けられなくなります。
常時10人以上になった時点で、速やかに「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を用意して、
税務署長に届け出るようにしましょう。
支給人員が常時10人以上になったにもかかわらず、この届出書を提出していないままでいると、支
給人員が10人以上になった時点まで遡り、不納付加算税および延滞税が課せられることになる場合があるため、注意が必要です。
※本記事の記載内容は、2025年2月現在の法令・情報等に基づいています。
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多くの中小企業において、資金繰りのために役員個人のお金を会社に貸し付けることがあります。
このように役員が個人として会社に貸し付けているお金を「役員借入金」といいます。
この「役員借入金」は、一見すると便利な資金調達の手段に思えますが、相続時に大きな問題となる可能性があります。
今回は、役員借入金の基本的な仕組みと相続に関するリスクについて解説していきます。
役員借入金のメリット・デメリットとは?
役員借入金とは、会社が役員(主に社長)から借り入れているお金のことを指します。
たとえば、会社の資金が一時的に不足した際に、社長が個人の資産から会社に500万円を貸し付けた場合、
この500万円が役員借入金となります。
会社の決算書では、この借入金は「役員借入金」という勘定科目で負債として計上されます。
つまり、会社にとっては「返済しなければならないお金」として扱われるのです。
役員借入金は、主に会社設立時の運転資金の確保や、急な支払いへの対応、さらには設備投資や事業拡大の資金調達など、
さまざまな場面で活用されています。
特に中小企業では、銀行からの融資を受けづらい場合の代替手段として利用されることも多いのが現状です。
役員借入金の重要な特徴は、相続が開始した際に相続財産として扱われることです。
役員借入金は被相続人の貸付金、つまりは確実に返済されるべき債権として見なされるため、
相続人にとっては「会社から受け取れるお金」として相続税の課税対象となります。
この点は多くの経営者が見落としがちな重要なポイントといえます。
これにより、相続時には二つの大きな問題に直面する可能性があります。
一つ目は、会社の経営状態による影響です。
会社が債務超過に陥っている場合でも、原則として役員借入金の評価額を下げることはできません。
つまり、実際には回収がむずかしい状況であっても、相続税の計算上は全額が相続財産となってしまうのです。
二つ目は、納税資金の不足リスクです。
役員借入金は相続人から見れば、被相続人の貸付金という「紙の上の財産」であり、実際にはすぐに現金化できるわけではありません。
しかし、相続税は現金での納付が必要となるため、相続人の納税資金が不足する事態に陥る可能性があります。
このように、役員借入金は会社経営において便利な資金調達の手段である一方で、相続時には予期せぬ問題を引き起こす可能性があります。
経営者は、これらのリスクを理解したうえで、適切な対策を講じることが重要です。
役員借入金を減らすためにできること
相続が開始した後に、役員借入金の対策を講じるのは非常に困難です。
そのため、相続税の問題を回避するには、相続開始前から計画的な対策を講じることが重要となります。
ここでは、役員借入金を減らすための具体的な方法について解説していきます。
(1)資本金への振り替え(DES)
DES(デット・エクイティ・スワップ)とは「債務の株式化」、つまり役員借入金を株式(資本金)に振り替える方法です。
借入金が資本金となることで、自己資本比率が増加し、会社の財務体質が改善され、金融機関からの評価も上がる可能性があります。
(2)役員報酬の調整による返済
役員報酬を一時的に減額し、その分を役員借入金の返済に充てる方法です。
現実的な対策ですが、役員報酬の減額分だけ会社の利益が増えることになり、法人税の支払いが増える可能性があります。
また、役員報酬を期中に変更することはできません。
そのため、役員報酬の調整(減額)は事業年度開始時に行う必要があります。
(3)債権放棄の検討
役員が借入金の債権を放棄する方法もあります。
ただし、この場合、会社側で債務免除益が発生し、課税対象となる可能性があります。
また、状況によっては、ほかの株主への贈与と見なされることもありますので、注意しましょう。
(4)会社への貸付金の贈与
役員借入金を、推定相続人に生前贈与する方法です。
この場合、贈与税の基礎控除110万円を超えなければ、贈与税が課税されません。
ただし、生前贈与加算といって、相続時期によっては、生前贈与した分が相続財産に含まれることもあります。
生前贈与加算の年数は従前の相続開始前3年間の贈与から、現行では相続開始前7年間の贈与までと段階的に延長されているため、
早めの対策が重要となります。
役員借入金は便利な資金調達の手段ですが、さまざまなデメリットも存在します。
金融機関から新規で融資を受ける際のイメージにも関わるため、極力、役員借入金がない状態にしておきましょう。
知らないうちに役員借入金が増えていたということがないように、
日常的な資金管理を徹底するのはもちろん、役員借入金がある場合は、相続開始前の早い段階から、
計画的に役員借入金の解消を進めましょう。
※本記事の記載内容は、2025年1月現在の法令・情報等に基づいています。
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中小企業の経営において、企業資産と個人資産は時に混同しがちです。
しかし、この線引きがあいまいなままだと、後にさまざまなデメリットをもたらす可能性があります。
また、しっかりと区別することにより、金融機関をはじめ外部関係者からの信頼を高められるというメリットもあります。
今回は、企業資産と個人資産を区別することの重要性、そして具体的な方法を解説します。
企業と個人の資産を明確に区別する必要性
企業資産と個人資産を分ける一番の理由は、企業の場合は原則、会社の負債に対して
経営者個人が責任を負わなくてすむようにするためです。
この原理原則を成立させる前提として、企業資産と個人資産の明確な区分が必要となります。
これに加えて、資産を区分するメリットは複数、存在します。
第一に、外部関係者からの信頼向上という観点です。
会社が事業を展開していくうえで、銀行からの融資や取引先との良好な関係構築は欠かせません。
その際、企業の財務状況が適正かつ明確であることは、信頼関係を築く重要な要素となります。
たとえば、融資を受ける際に企業資産と個人資産の区別があいまいだと、融資された資金が事業目的ではなく
私的な用途に流用されるのではないかという疑念を持たれかねません。
これは会社の信用力を大きく損なう要因となります。
次に、税務リスクの軽減です。
企業資産と個人資産を混同していると、私的な費用を会社の経費として処理するなどの不適切な経理処理が発生する可能性があります。
具体的には、家族との食事や私的な旅行の費用を接待交際費として計上するケースが該当します。
その結果、特定の経費が前年と比較して急激に増加しているなど、例年と大きく違う点があると、
税務調査で詳細な確認を要求される可能性が高くなります。
さらに重要なのが、事業の健全な成長という観点です。
企業資産と個人資産が混在していると、正確なキャッシュフローの把握が困難になります。
表面上の決算書では黒字に見えても、実際には資金繰りが悪化している、といった事態に陥りかねません。
事業の健全な成長のためには、財務状況を正確に把握することが不可欠なのです。
契約や個人資産の移転など資産の区別方法
企業資産と個人資産を明確に区別することの重要性について理解できたところで、
具体的にどのように区別し、管理していけばよいのでしょうか。
まず重要なのが、経営者個人が所有する資産を会社が使用している場合の対応です。
このような場合は賃貸契約を締結し、適切な賃料を支払うことが必要です。
たとえば、経営者所有の建物を会社の事務所として使用している場合、市場相場に基づいた賃料を設定し、
契約書を取り交わすことで、会社と個人の関係を明確にすることができます。
また、事業に使用している経営者個人の資産については、会社への移転を検討することをおすすめします。
たとえ、会社と契約を取り交わしていたとてしても、経営者の都合で個人の資産が第三者へ売却などされた場合、
金融機関から事業の継続に関して疑念を抱かれる可能性が考えられます。
経営者個人の資産を会社所有にすることにより、資産の管理が一元化され、経理処理も簡素化されるというメリットもあります。
経営の基本である現金管理の徹底も重要なポイントです。
企業活動における現金の出入りを正確に記録し、社内での不正や誤りを未然に防ぎましょう。
特に注意すべきは、個人としての費用(私的な飲食代など)を法人の経費(接待交際費など)として処理してしまうケースです。
また、会社から経営者への貸し付けも、事業上の必要性が認められない限り、行わないようにしましょう。
経営の透明性を高めることも、重要な取り組みの一つです。
「中小企業の会計に関する基本要領」などを参考に、信頼性のある計算書類を作成するのも重要なポイントです。
また、金融機関に対して自社の財務情報を定期的に報告することで、企業としての信用力向上にもつながります。
これらの取り組みを効果的に進めるために、今一度、社内の資産や契約状況などについて把握しておきましょう。
現金管理など、企業規模や業態によって最適な方法は異なりますので、自社の状況に合わせた方法で、
できるところから進めていくことをおすすめします。
※本記事の記載内容は、2025年1月現在の法令・情報等に基づいています。
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個人事業主であれば、毎年1月1日から12月31日までの所得を計算し、
翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行う必要があります。
しかし、確定申告は手間がかかるため、後回しになってしまいがちです。
もし、手が回らないのであれば、税理士に確定申告を依頼するという方法もあります。
今回は、税理士に確定申告を代行してもらう際に知っておきたいことを説明します。
税理士に確定申告を依頼するメリット
確定申告とはその年の1月1日から12月31日までの所得と、
その所得から生じる税金を計算して確定させる手続きのことです。
自営業者やフリーランスなど、個人事業主の多くは自分で確定申告を行いますが、
準備から確定申告書の作成、税務署への提出までには、かなりの時間と労力を割かなければいけません。
また、期限までに申告しないと無申告加算税や延滞税が課せられる場合もあります。
もし、本業が手一杯で期限までに確定申告をすることがむずかしいのであれば、税理士に確定申告の代行を依頼することも検討してみましょう。
税理士は税理士法で定められた国家資格を持つ税の専門家です。
納税する人に代わって「税務代理」や「税務書類の作成」を行なったり、「税務相談」を受けたりすることができ、
これらの業務は税理士の独占業務のため、税理士の資格を所有していない人がこういった業務を請け負ってはいけないことになっています。
したがって、個人事業主が確定申告を依頼する際も、必然的に税理士に依頼することになります。
税理士に確定申告を代行してもらう一番のメリットは、時間と労力を節約できるという点です。
ある調査では、個人が確定申告の作業を行なった場合、平均して、12時間以上かかるというデータもあります。
1日2時間ずつ作業をしてもトータルで6日はかかることになり、この期間は本業が滞ってしまうことにもなりかねません。
確定申告を税理士に任せることで、本業に専念できるのは大きな利点です。
また、正確な内容で確定申告ができるというのも税理士に依頼するメリットの一つです。
もし、申告内容に誤りがあると、税務署から指摘やペナルティを受ける可能性があります。
税理士が税に関する専門知識に基づいて確定申告書を作成することで、申告のミスや間違いなどが発生せずに済むでしょう。
さらに、税務署に提出する確定申告書に税理士の署名があれば、信頼性が高まり、税務調査が入る可能性を軽減させる効果が期待できます。
確定申告を依頼するタイミング
事業内容や売上などによって、税理士に確定申告を依頼するタイミングはさまざまです。
たとえば、個人事業主が法人成りするタイミングは、税理士に依頼するよい機会です。
法人成りする場合、その年度の個人事業主だった期間の事業所得について確定申告をする必要があります。
税理士に依頼することで、法人に切り替わるタイミングにおける、煩雑な確定申告の手続きにかかる手間を軽減できます。
また、売上が伸びてきており、本業に集中したい場合は、確定申告の代行も含めた顧問契約を税理士と結ぶという選択肢もあります。
事業規模が小さく年間の売上が低ければ、税務業務もそこまで手間ではありませんが、
一定以上の額を超えると、領収書の枚数や会計や税務に関する作業も増えていきます。
一定の費用はかかるものの、確定申告を税理士に依頼することで、時間や労力を節約でき、正確な申告を行うことが可能です。
確定申告は年度により期間が変わることがあり、2025年は2月17日(月)から3月17日(月)までに行う必要があります。
期限に遅れることのないよう、準備を進めていきましょう。
※本記事の記載内容は、2025年1月現在の法令・情報等に基づいています。
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