贈与税・相続税が免除される『事業承継税制』活用のススメ   2020-07-22

  少子高齢化が進み、中小企業では後継者の不在が問題になっています。

望まぬ廃業が増えるなか、政府はこれを喫緊の課題とし、2009年度に

『中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律』に基づき

『事業承継税制』を制定しました。

これは、事業を承継する際の贈与や相続において、取得した非上場の株式にかかる

贈与税や相続税の納税を減免する制度のことです。

取り組みを強力に後押しするため、2018年度の税制改正では、さらに要件が緩和されました。

今回は、この制度を利用するための条件や、手続きの方法についてご紹介します。
 
 事業承継税制とはどんな制度か?
 
業績のよい中小企業が廃業してしまうことは、国家にとっても大きな損失です。

事業の引継ぎを支援するために、これまでにもさまざまな支援策が打ち出されてきました。

事業承継税制は、そのうちの一つです。 

概要を説明すると、先代の経営者から後継者に、事業承継を目的として資産を渡した場合、

一定の要件のもと、相続税や贈与税の納税が猶予され、さらに先代経営者が死亡した場合には、

その納税額が免除されます。

2018年度の税制改正においては、2027年12月31日までの時限措置として、

この『事業承継税制』の要件が緩和され、制限の撤廃や、猶予割合の引き上げなども行われた

特例措置が設けられました。

さらに多くの中小企業がこの制度を利用できるようになっています。

何億円もの納税が免除されることもあり、これまで金銭的な問題で

廃業を考えていた事業者にとっては朗報となりました。 

具体的には、これまでの措置に加え、納税猶予の対象となる

非上場株式を全体の3分の2までとする制限を撤廃。

すべての株式が制度の対象となりました。

さらに、これまでは対象となる株式のうち、相続税の納税が猶予されるのは80%の株式だったのに対し、

改正後は猶予割合が100%に拡大しました。 

つまり、新しい事業承継税制では、贈与税・相続税も一切なく、後継者に事業を譲ることができるのです。 


満たすべき条件と手続きについて
 
上記のものはすべて事業承継税制の特例措置というくくりになっており、

制度を利用するためには、満たすべき条件があります。 

まず、一つめの条件は、非上場の会社で、中小企業基本法で規定された中小企業であること。

中小企業に該当する条件は業種により異なり、たとえば小売業であれば、

資本金が5,000万円以下の会社か、従業員の数が50人以下の会社が対象となります。

製造業であれば、資本金が3億円以下の会社か、従業員の数が300人以下の会社が対象です。

業種によって条件が異なるので、国税庁のホームページなどで確認しておきましょう。 

また、後継者についてもいくつかの条件があります。

贈与税の猶予を受ける場合には、贈与の時において後継者が20歳以上で、

すでに会社の代表権を有しており、役員の就任から3年以上経過していなければいけません。

また、後継者とその親族など特別な関係がある者で、50%を超える議決権数を

保有している必要もあります。 

相続税の猶予を受ける場合には、相続開始日の翌日から5カ月を経過する日において

会社の代表権を有しており、さらに相続開始の時において、後継者とその親族など

特別な関係がある者で50%を超える議決権数を保有していることなどが条件になります。

では、こうした条件を満たしたうえで、特例措置の制度を利用する場合には、

どのような手続きがあるのでしょうか。 

贈与税に関しては、後継者が先代の事業者から会社の一部、または全ての非上場の株式を

2027年12月31日までの間に贈与された場合が対象となります。

まず、自社の継承者や、その後の経営の見通しなどを記載した『特例承継計画』を作成します。

この特例承継計画は、税理士、商工会、商工会議所など、認定経営革新等支援機関の

所見を記載のうえ、都道府県知事に提出します。

期限は2023年3月31日までです。 

その後、贈与を受けた翌年の1月15日までに、『中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律』、

いわゆる『円滑化法』の認定申請を行い、さらに、申告期限となるその年の3月15日までに、

贈与税の申告書などの書類を税務署に提出。

同時に、贈与税と利子税の額に見合った担保を提出し、はじめて納税の猶予が認められます。 

相続税に関しては、基本的な手続きの流れは贈与税と同じですが、

申告期限は先代の経営者が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内となっており、注意が必要です。 

このように、『事業承継税制』は、メリットも大きい反面、会社の代表者を退任したり、

対象の株式を譲渡したりすると認定が取り消され、

再計算した分の贈与税や相続税の支払いが生じるというリスクもあります。

自社の今後をしっかりと見据え、専門家とも相談のうえ、十分な計画を立てて制度を活用していきましょう。 


※本記事の記載内容は、2020年6月現在の法令・情報等に基づいています。
 



お困りのことはどんなことでも斎賀会計事務所までお気軽にご相談ください。 

  

 

 知っておきたい! 会社設立による節税効果とデメリット   2020-07-02

  
 企業に属さずに事業を行う場合、個人事業主として仕事をする方法もあれば、

会社を設立して法人になるという選択肢もあります。

法人化にはさまざまなメリットがありますが、なかでも特によくいわれるのは

節税効果で、その内容は非常に多岐にわたります。

しかし一方で、会社設立には当然コストがかかりますし、

社会保険への加入なども必要となります。

今回は、会社設立における会計上のメリットとデメリットを紹介していきます。
 
 所得額によっては法人税のほうがお得に 

会社を設立するメリットはさまざまあります。

たとえば、『対外的な信用度が高まる』『それによって大きな仕事を得やすくなる』

『金融機関からの融資が受けやすくなる』『事業拡大がしやすくなる』などです。

なかでも大きいのが税制面のメリットで、ある程度の稼ぎを出している個人事業主の場合、

法人化したほうがお得になるといわれています。

もちろん、個人事業主と法人のどちらが会計上のメリットが大きいかについては、

置かれている状況や手がける事業内容によって異なります。

では、法人化による会計上のメリットとは具体的にどのようなものなのでしょうか。

まずは個人事業主の所得税よりも法人税のほうが納税額が少なくなるというケースを

見てみましょう。 

法人が納める税金には法人税や法人住民税、法人事業税などがあります。

一方で、個人事業主は所得に応じた所得税を支払わなければなりません。 

法人税率は、区分に応じて原則的に一定です。

現在は資本金1億円以下の法人は、所得金額のうち年800万円以下の部分については

15%(適用除外事業者は19%)、それを超える部分には23.2%の法人税がかかります。

それに対して個人事業主が支払う所得税は税率5~45%で、

所得が増えれば、その分税率も高くなります。

つまり、法人税が一定税率なのに対し、所得税は超過累進税率で課税されることになるため、

同じ事業を行っていても、ある一定の売り上げを超えると法人のほうが有利になるわけです。

これが、個人事業主の売り上げが伸びると、法人化を勧められる理由です。 


『給与所得控除』により控除額が多くなる 

さらに、法人化を行うと、『給与所得控除』が使えるというメリットがあります。

『給与所得控除』とは、給与所得のうち一定額を必要経費として控除できるというもので、

控除額は以下のように定められています。

つまり、役員報酬として自身に給与を支払うようにすれば、会社の売り上げから必要経費を控除し、

そこからさらに給与所得控除を適用できるということになります。

法人化しても経営者個人には所得税や住民税は課せられますので、その際に

控除を適用した額で税金を計算することができます。 

<給与所得控除額(2020年分以降)>
〇給与等の収入金額……給与所得控除額
●180万円以下……収入金額×40%-10万円
※55万円に満たない場合には、55万円
●180万円超、360万円以下……収入金額×30%+8万円
●360万円超、660万円以下……収入金額×20%+44万円
●660万円超、850万円以下……収入金額×10%+110万円
●850万円超……195万円 

たとえば、法人化したあと、自分への役員報酬として700万円を支給する場合、

180万円が給与所得控除額となるわけです。

そして、この700万円から180万円を差し引いた、520万円をもとに

経営者個人の所得税や住民税が計算されます。 

一方、個人事業主は白色申告なら一切控除はされませんし、

青色申告であったとしても最大で65万円しか控除されません。

法人化して役員報酬にすれば、より多くの金額を控除することができるのです。 


知っておきたい法人化のデメリット 

注意しておきたいのは、役員報酬は企業の株主との委任契約となるため、

自由に変更できないということです。

たとえば、役員報酬を高額に設定してしまった場合などです。

会社の業績が悪化しても役員報酬を下げることはできないので、

会社に負担をかけながら、そのうえでさらに高い所得税や住民税を支払わなければなりません。

これでは給与所得控除も活かせませんし、節税にもなりません。

役員報酬は会社の今後を見通したうえで慎重に決める必要があります。 

また、法人化すると、個人事業主よりも自由に使えるお金が少なくなるのもデメリットの一つです。

経営者といえども、個人のお金と会社の資金は区別されるため、会社のお金を自由に使うことはできません。

自分の会社でありながら、会社からお金を借りる際には、会社と借り入れ契約を結ばなければなりません。 

さらに、従業員を雇用する場合には、社会保険料を負担しなければなりませんし、

当然、会社設立に関しての登記や定款の作成、資本金など、コストや時間がかかります。

また、会社が赤字であれば法人税はかかりませんが、会社が所在する自治体には、

赤字であっても、法人住民税の均等割を支払わなければなりません。

法人住民税の均等割とは、所得額にかかわらず、資本金や従業者数に応じて課税される税金です。 

このように、会社を設立すると税制面でメリットも得られると同時に、さまざまなデメリットも発生してきます。

これらを加味して、個人事業主でいくのか、会社を設立して法人として事業を進めていくのかを決めたいところです。  


※本記事の記載内容は、2020年6月現在の法令・情報等に基づいています。

お困りのことはどんなことでも斎賀会計事務所までお気軽にご相談ください。 

  

 

 新型コロナの影響下における納税の猶予制度とは?   2020-06-24

 世界中にパンデミックを引き起こした新型コロナウイルスにより、

国内経済は甚大な打撃を受けました。

政府は収入が減った企業や個人事業主に対して、緊急の貸付や

給付金の支給、各種助成金制度の創設など、さまざまな施策を打ち出しています。

期限内の納税がむずかしい場合に利用できる制度として、

従来からある『納税の猶予』に加えて、『納税の猶予の特例(特例猶予)』

という新たな制度も創設されました。

そこで今回は、新型コロナウイルスの影響を受けた企業に対する

納税の猶予制度について説明します。 
 
 納税が困難なら『納税の猶予』の利用検討を

2020月4月、新型コロナウイルスの感染拡大にともなう緊急事態宣言が発令され、

店舗を休業、あるいは事業所を閉鎖せざるを得ず、大きな損失が生じた企業や

個人事業主は少なくありません。

さらに、休業や取引の減少が原因で倒産するケースも出てきており、事態は深刻です。

社会全体の経済的損失は計り知れず、2008年のリーマンショック時を上回るとも

いわれています。

この状況下、期限内に税金を納めることがむずかしいという企業もあるでしょう。

そのような場合に利用できるのが、政府が用意している『納税の猶予』制度です。

これは、以下の要件に該当する場合に所轄の税務署に申請すれば、

原則として1年間、納税の猶予が認められるという制度です。

 

●一時の納税により、事業の継続・生活維持が困難となるおそれがある

●納税について誠実な意思がある

●納期限から6カ月以内に申請がある

●猶予を受けようとする国税以外に滞納がない


猶予の対象となるのは、印紙税などを除くほとんどすべての国税です。

法人であれば、法人税や所得税なども含みます。

猶予中には延滞税が加算されますが、通常は年8.9%の割合で加算されるところを、

年1.6%の割合に軽減されます。

また、滞納による財産の差し押さえや、売却も猶予されます。

従来であれば、猶予を受けるためには担保の提供が必要となる場合がありましたが、

新型コロナウイルスの影響により納税が困難な場合は、

明らかに担保を提供できる状況でない限り、不要としています。


さらに有利な『納税の猶予の特例』とは?


さらに政府は、新型コロナウイルスによる影響を考慮して、

より有利な措置となる『納税の猶予の特例(特例猶予)』を創設しました。

これにより、2020年2月1日から2021年1月31日までに納期限が到来する

法人税、消費税、所得税などほぼすべての国税について、以下の要件に該当する場合、

納期限から1年間、無担保かつ延滞税なしで納税の猶予が認められます。

●新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年2月以降の任意の期間(1カ月以上)において、

事業等に係る収入が前年同期比較でおおむね20%以上減少している

●国税を一時に納税することが困難

特例猶予は納期限までに申請する必要があります。

ただし、2020年6月30日までの措置として、対象期間の国税であれば、

すでに納期限が過ぎている未納の国税(猶予中のものも含む)についても、

遡って特例を適用することができます。

なお、本人が新型コロナウイルスに感染した場合など、個別の事情がある場合は、

税通則法第46条によって、上記の要件を満たしていなくても

猶予が認められる場合があります。

個別の事情がある場合は税務署に相談してみるとよいでしょう。

納税の猶予制度は自動的に適用されることはないため、必ず期限までに申請する必要があります。

申請書類は国税庁のホームページでダウンロードできるほか、

所轄の税務署で案内を受けることも可能です。

やむを得ない事情で期限が守れない場合については、

税務署で個別に判断されますので、まずは相談してみましょう。

不明点や相談事があれば、電話による相談窓口として、

国税局猶予相談センターも用意されています。

国税庁では、状況に応じてさらに1年間の猶予も視野に入れていることを発表しています。

新型コロナウイルス感染症の影響により厳しい経営が続くなか、

財務が切迫しているならば、猶予制度を利用するメリットは大きいでしょう。

 
国税を納付することによって事業の継続が困難になる場合は、

制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

  

   
※本記事の記載内容は、2020年6月現在の法令・情報等に基づいています。

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固定資産税から印紙税まで。経費として計上できる『租税公課』とは     2020-06-17

 

   法人は事業を展開していくうえでさまざまな税金を支払いますが、

一般的に経費として計上できる税金や公的な課金は『租税公課』という

勘定科目で処理をします。

 『租税公課』とは、いわゆる国税や地方税などの税金である『租税』と、

国や公共団体などに対する交付金や会費などの公的な課金である『公課』を

合わせたもので、税務担当者は覚えておかなければならない区分です。

経費に計上できるということは、利益を減らすことができるため、納める税金を減らすことができます。

ではいったい、どんな税金が『租税公課』として経費に計上できるのでしょうか。

経費にならない税金や公課を『租税公課』に含めないために、経費として計上できる

税金の種類を把握しておきましょう。
 
 費にできる税金とできない税金 

『租税公課』は、原則として経費になる税金や公課を取り扱う勘定科目で、

さまざまな税金がこの『租税公課』に該当します。

基本的に支払う税金のうち、経費として計上できるのは、印紙税や事業税などです。 

逆に、所得税や外国所得税(外国法人税)は、税額控除として法人税から控除されるため

経費には計上できません。

また、法人税、都道府県民税、市町村民税なども、法人の所得から支払われる税金のため、

『租税公課』には含まれません。

さらに、各種加算税や各種加算金、延滞税や延滞金(地方税の納期限の延長に係る延滞金は除く)

並びに過料などはペナルティの意味合いが強く、経費として計上するものの

損金として認められることはありません。 

『租税公課』には印紙税や事業税のほか、登録免許税、固定資産税・都市計画税、償却資産税、

事業所税、不動産取得税、自動車税・軽自動車税、消費税、会費、公共サービスへの手数料などが該当します。

それでは、一つずつ見ていきましょう。 

印紙税は公的な文章を作成するときに必要になる印紙代のことで、

登録免許税は不動産、会社、人の資格などについての登記や登録、特許、免許などについて課される税金です。 

固定資産税・都市計画税は、法人の所有する不動産や、事業に使う設備などにかかってくる税金です。

また、償却資産税も固定資産税の一種で、機械や備品など償却資産に課せられます。 

事業税は事業にかかる税金です。

事業所税は特定の市区町村だけに課せられる税金で、都市環境の整備や改善などの費用に充てるために、

事業所に課されます。 

不動産取得税は不動産を取得したときに発生する税金で、自動車税・軽自動車税は

法人の所有している社用車などの自動車に課されます。

このほか、自動車取得税や重量税なども含まれます。 

消費税に関しては、税込経理方式の場合は、原則として納税申告書を提出した年度の

経費に計上することができます。

ただし、申告期限未到来の納税申告書に記載すべき消費税等の額を

未払金または未収入金に計上した場合には、その計上した年の経費に計上することができます。

また、税抜経理方式で経理処理している場合には、『租税公課』には計上しません。 

印鑑証明書や住民票の発行手数料などの公共サービスの手数料や、

商工会や商工会議所への会費なども『租税公課』に含まれます。 


金にできないが『租税公課』で処理するもの 

法人が会社を運営していくうえで支払う必要のある税金の多くは、『租税公課』として処理できます。

ただし、あくまで事業に必要なものだけなので、たとえば個人事業主がプライベートでも使用している

自家用車を事業でも使っている場合などは、月の走行距離などから、プライベートと事業で使用している

割合を計算し、事業にかかわるぶんだけを『租税公課』にしなければいけません。

自動車税のすべてを『租税公課』にできるわけではないことを覚えておいてください。 

また、罰金や延滞税、加算税などは、会計上は『租税公課』として処理し、

そのうえで、法人税の計算の際に、確定申告書で加算することになります。 

損金としては認められないのに『租税公課』として処理するのは違和感を覚えますが、

申告の際に、加算の処理をすることで損金からは除かれますので、結果として、

会計上は経費として計上されていても、損金に算入されることはありません。

ただし、うっかり忘れないためにも、帳簿にはその旨を記しておく必要があります。 

ほかにも、損金にならない税金を『租税公課』の勘定科目で処理できるものはあります。 

しっかり『租税公課』を把握し、該当する税金や公的な負担金を経費として算入することで、

余計な税金を払わないようにしましょう。

  

   

 
※本記事の記載内容は、2020年5月現在の法令・情報等に基づいています。

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 支給要件が緩和・拡充された『キャリアアップ助成金』とは?    2020-06-03

 

   2020年4月から、『パートタイム・有期雇用労働法』と

『改正労働者派遣法』が施行されました。

 職場では、『同一労働同一賃金』の概念のもと、以前にも増して

 非正規労働者のキャリアップや処遇改善を求められるようになるでしょう。

 そこで今回は、支給要件の緩和や拡充により、

さらに活用しやすくなった『キャリアアップ助成金』の概要をお伝えします。


  柔軟になった正社員化後の支給要件

1.正社員化コースの賃金5%要件の緩和

旧要件では、『正社員化後に、有期雇用の際は支給していなかった賞与を支給することで5%上昇』となる一方、

有期雇用労働者にも賞与を支給していた場合、正社員化後の賞与の支給時期・支給間隔によっては要件に該当しない

可能性がありました。

同一労働同一賃金の中小企業での施行(2021年4月)に向け、諸手当や賞与について見直しを行う企業も多いと

思いますが、新要件では(ア)(イ)から選べるという、より柔軟な対応ができるようになりました。

●旧要件
正規雇用等へ転換した際、転換前の6カ月と転換後の6カ月の賃金(賞与や諸手当を含む賃金の総額)を比較して、

5%以上増額していること

ただし、転換後の基本給や定額で支給されている諸手当を、転換前と比較して低下させていないこと

●新要件
正規雇用等へ転換した際、転換前の6カ月と転換後の6カ月の賃金を比較して、

以下の(ア)または(イ)のいずれかが5%以上増額していること

(ア)基本給+定額で支給される諸手当(賞与を除く)の総額

(イ)基本給+定額で支給される諸手当+賞与の総額

ただし、転換後の基本給や定額で支給されている諸手当の合計額を、転換前と比較して低下させていないこと
 

複数コースの併用も可能

2017年からの労使合意に基づく社会保険の適用拡大の措置(従業員500人以下の企業での労使合意による適用拡大)

の導入に伴い、次の3コースの拡充・延長も施行されました。

2.賃金規程等改定コースの拡充

有期雇用労働者等の基本給の賃金規程を見直し、昇給した場合に適用。

●旧要件

(1)すべての賃金規程等を2%以上増額改定した場合、対象労働者数が1人~3人の1事業所当たり

9万5,000円を助成(対象労働者数によって助成額は異なる)

(2)一部の賃金規定等を2%以上増額改定した場合、対象労働者数が1人~3人の

1事業所当たり4万7,500円を助成(対象労働者数によって助成額は異なる)

さらに、3%以上増額改定した場合に助成額を加算

(1)すべての賃金規定等を改定:1人当たり1万4,250円

(2)一部の賃金規定等を改定:1人当たり7,600円

●新要件

5%以上増額した場合の加算措置を創設

(1)すべての賃金規定等を改定:1人当たり2万3,750円

(2)一部の賃金規定等を改定:1人当たり1万2,350円

3.選択的適用拡大導入時処遇改善コースの拡充

有期雇用労働者等の社会保険適用について取組を実施し、新たに被保険者とした場合に適用されます。

●新要件
・労使合意に基づく任意適用に向けて、保険加入と働き方の見直しを進める取組

(外部専門家を活用した保険加入メリットの説明、相談会等を開催することなど)を行った場合、

  19万円を助成(新設)

・短時間労働者の生産性向上のため、研修制度や評価制度の導入を行った場合、10万円を加算助成

また、労使合意に基づき社会保険の適用拡大の措置を実施する事業主が、被用者保険加入とともに

基本給の増額を行う場合の助成において、これまでは3%以上の増額が対象でしたが、

2%以上3%未満の増額も対象となりました。

4.短時間労働者労働時間延長コース(経過措置の延長)

有期雇用労働者等の週所定労働時間を延長し、新たに社会保険を適用した場合に助成される

『短時間労働者労働時間延長コース』の経過措置が、令和3年3月31日まで延長されることになりました。

〈週所定労働時間を延長した場合の支給額(一人当たり)〉
1時間~2時間未満……4万7,500円
2時間~3時間未満……9万円
3時間~4時間未満……13万5,000円
4時間~5時間未満……18万円
5時間以上……22万5,000円
※支給申請上限は45人

ちなみに『選択的適用拡大導入時処遇改善コース』と『短時間労働者労働時間延長コース』は併用ができ、

次のような受給も可能となります。

・労使合意に基づく社会保険適用拡大に向けての取組を実施→19万円

・研修制度や評価制度の導入→10万円

・週所定労働時間を18時間から21時間とし、時給を1,000円から1,030円(3%)に昇給→一人当たり2.9万円

上記合計金額に、週所定労働時間延長支給額13.5万円を受給することも可能となります。

よりパワーアップしたキャリアアップ助成金を活用して従業員の成長を応援し、さらなる事業の発展を

目指してはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2020年5月現在の法令・情報等に基づいています。

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 払いすぎると戻ってくる!? 消費税の還付を受けるためには    2020-05-26

  

   消費税は消費者が負担するものですが、実際に申告や納税を行うのは、

商品やサービスを提供する事業者になります。

実は、条件によって消費税の還付を受けることができます。

では、どのような条件を満たせば、消費税の還付を受けることができるのでしょうか。

今回は消費税の還付について、基本的な部分から紹介します。

   消費税還付のためには『原則課税』を選択

消費税の還付は『預かった消費税』よりも『支払った消費税』が多いときに受けることができます。

たとえば、売り上げが減少して仕入れ等が多かったケース、つまり赤字の場合などは

『預かった消費税』よりも『支払った消費税』が多いので、還付を受けることが可能なのです。

ただし、赤字になったからといって必ず還付を受けられるとは限りません。

従業員の給与や租税公課などの経費については、消費税がかからないので、

これらが原因で赤字になった場合は、還付を受けることはできません。

きちんと『預かった消費税』から『支払った消費税』を差し引いて、

『支払った消費税』が多いかどうかを確認しておきましょう。

  また、還付を受けられるのは、『原則課税』で消費税の納税額を算出している事業者に限られます。

消費税の納税額を計算するには『原則課税』と『簡易課税』の2種類の方法があり、

『原則課税』は実際の商取引に則した計算方法で、『預かった消費税』から『支払った消費税』を

差し引くことで求めることができます。

たとえば、『預かった消費税』が150万円で、『支払った消費税』が100万円の場合、

納税額は50万円になるわけです。 

一方、『簡易課税』は『預かった消費税』に『みなし仕入率』を乗じた額を、

『支払った消費税』と“みなし”ます。

この『みなし仕入率』は事業区分ごとに決められており、卸売業は90%、小売業は80%、

農業や林業等製造業は70%、飲食業等は60%、運輸通信業や金融業等サービス業は50%、

不動産業は40%と定められています。

つまり、『簡易課税』は、『預かった消費税』が150万円で、自社が卸売業の場合、

下記のような計算式になります。 

・150万円-(150万円×90%)=15万円

このケースでは『原則課税』よりも、『簡易課税』のほうが納税額は少なくなりますが、

実は、『簡易課税』では還付を受けることができません。

還付を受けるためには、原則として『原則課税』で計算する必要があります。

たとえば、『原則課税』で計算した場合に、『預かった消費税』が150万円で、

『支払った消費税』が200万円の場合、差し引き50万円の還付を受けることができますが、

『簡易課税』は、『みなし仕入率』で求めなければならないため、『支払った消費税』は考慮されません。

『預かった消費税』の150万円を元に計算されるため、結局、15万円の税金が課せられてしまいます。

通常、『支払った消費税』が少ない場合、節税のためには『簡易課税』を選びたいところですが、

赤字などで『支払った消費税』が多い場合には、

『原則課税』で還付を受けたほうがお得だということになります。


   住宅用の不動産は還付の対象外

赤字の場合はもちろんですが、輸出業の事業者なども還付が発生しやすいといえます。

国内での商取引には消費税が発生しますが、輸出取引に対しては消費税が免除されるため、

輸出業の売り上げには消費税が発生しないことになります。

つまり、国内で仕入れを行っていれば、基本的には『預かった消費税』よりも、

『支払った消費税』が多くなることがほとんどなので、還付を受けられるというわけです。

ほかにも、高額の設備投資や不動産の購入などを行ったというケースも、

『預かった消費税』よりも『支払った消費税』が多くなりがちなので、還付を受けられることがありますが、

一定期間、免税点制度適用の制限や、簡易課税制度の選択の制限等が設けられているので、注意が必要です。

また、2020年度の税制改正で、1,000万円以上の住宅用の賃貸建物を購入した際に発生した消費税に関しては、

消費税の還付が受けられないことになりました。

規制は住宅用の建物のみで、設備やテナント用の建物などは今まで通り、控除の対象になります。

社員寮などに使う建物を購入する際には、対象外となり、

還付を受けられなくなる可能性が出てくるので注意してください。

消費税の還付は、『預かった消費税』よりも、『支払った消費税』が多い場合に、

『原則課税』を選択することで受けることができます。

還付を受ける際には、『消費税の還付申告に関する明細書』を消費税の申告書と一緒に提出します。

これまで『簡易課税』を選択していた事業者は、一度、見直してみてはいかがでしょうか。

課税事業者を選択する場合や、簡易課税制度の選択をやめる場合は、

当該課税期間開始の日の前日までに届け出が必要となりますので、計画的に検討しましょう。





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  法人税の『中間申告』はなぜ行う? その意味と申告方法   2020-04-22

  

   法人税というと、通常、決算の終了後に支払うというイメージがありますが、

一定の条件に該当する法人は年度の中頃に『法人税の中間申告』をしなければ

いけません。

中間申告をして納税した分の法人税は、年度末に支払う1年間分の法人税額から

控除されるので、不当に税金を多く徴収されるわけではありません。

しかし、中間申告があることを念頭に置いておかないと、突然の法人税の支払いで

資金繰りに苦慮してしまう可能性もあります。

今回は、中間申告の条件や申告の仕方などを紹介します。


中間申告の目的・条件・時期

   そもそもなぜ中間申告という制度があるのでしょうか。

「決算後にまとめて納税すればいいのでは?」と思う人も多いと思います。

法人税の中間申告は、各法人の納税による負担軽減を目的としています。

確定申告を行ってまとめて納税するよりも、事業年度の中間で一度、税金を納めておくほうが

資金繰りのバランスも取れ、経営が安定するという考えのもと、定められています。

いわば決算後に納める法人税の“前払い”だと考えることができます。

中間申告をして納税した額は、確定申告の際にそのままの額が控除されますし、

控除し切れなかった際にはその分が還付されます。

中間申告はすべての法人が行うわけではなく、NPO法人や前事業年度の法人税額が

20万円以下の法人は免除されます。

逆に、前事業年度の法人税額が20万円を超える普通法人はもれなく行う必要があります。

申告と納税の期限は、事業年度の開始後6カ月を経過した日から2カ月以内となります。

たとえば、3月決算の企業であれば、9月末が中間の決算日となり、11月末までが納付期限。

12月決算の企業であれば、6月末が中間の決算日で8月末が納付期限です。

  
中間申告の納税額の算出方法とは?

中間申告を行うためには、納税額を算出しなければいけません。

算出するための計算方法は『予定申告』と『仮決算』の二つがあります。

それぞれ見ていきましょう。

●予定申告

予定申告は、『前事業年度の法人税額÷事業年度の月数×6』という式で求めることができます。

つまり、多くの場合、前事業年度に支払った1年分の法人税の半分の額ということになります。

ほとんどの企業はこちらの方法で中間申告を行っています。

予定申告の手続きは、基本的には税務署から税額の記載された『予定申告書用紙』が送られてくるので、

必要事項を記入し、捺印して税務署に提出します。

そのうえで、税金の支払いが済めば、中間申告は完了となります。

●仮決算

その名のとおり、事業年度の中間地点で仮に決算を行ってしまう方法です。

基本的には計算が12カ月分から6カ月分になるだけで、作業内容や手間は本決算と同じです。

すべての取引をまとめ、決算書を作成しなければいけません。

非常に手間がかかりますが、一方で、その時点で適正な納税額が算出できるため、

『予定申告』よりも納税額が大幅に低くなることもあります。

たとえば、前事業年度が黒字で今事業年度が赤字の場合、

『予定申告』では前事業年度の法人税額の半分の額が中間申告として算出されてしまうため、

経営状態の苦しいなかで多額の納税を行わなければなりません。

しかし、『仮決算』であれば、今期の赤字分をベースとした妥当な額で中間申告を行うことができます。

   まとめると、『予定申告』は手続きが簡単というメリットはあるものの、

今期が赤字の場合でも前事業年度の法人税額に基づいて納税しなければならない

というデメリットがあります。

一方『仮決算』は、今期が赤字の場合は『予定申告』よりも低い納税額で済む

というメリットがあるものの、手間がかかり手続きも面倒というデメリット

があるということです。

なお、前年度実績に基づく予定申告による中間税額が10万円以下である場合、

または前事業年度の法人税額がない場合及び仮決算による中間税額が

前年度実績に基づく予定申告による中間税額を超える場合には、

仮決算による中間申告はできないこととされています。

ちなみに、中間申告を行わなかった場合でも、税務署側で自動的に『予定申告』をしたとみなされます。

しっかりと納付の義務が生じますし、中間決算日から2カ月以内に納付しない場合は

延滞税がかかってきますので注意してください。

いずれにせよ、前事業年度の法人税額が20万円を超える法人は一様に中間申告を行う必要があります。

資金計画を立てたり資金をプールしたりするなど、準備しておくと安心です。

急な税金の支払いに慌てることがないようにしておきましょう。

  

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  法人税の節税対策で要注意! 押さえておくべきポイントとは?   2020-04-08

  

   業績が上がって利益が出るのはよいことですが、その反面

頭を痛めるのが法人税の納付額の増加です。

利益が減るようにすれば法人税額も減らすことはできますが、

デメリットもあります。

そこで今回は、法人税の概要と法人税節税のヒントについて紹介します


特徴や計算式など 法人税の特徴とは?

 法人税には『各事業年度の所得に対する法人税』 『各連結事業年度の連結所得に対する法人税』

『退職年金など積立金に対する法人税』の三つの種類が あります。

原則として一般的な中小企業の場合は 『各事業年度の所得に対する法人税』を納付する ことになります。

 法人税の特徴としては、消費税などの間接税とは 異なり直接税であること、

住民税や事業税などの 地方税ではなく国税であることがあげられます。

また、 法人税は法人が各事業年度の所得を基に税額を算出して国に申告・納付しなければなりません。

このように納税者が申告及び納付を行う方式を申告納税方式といいます。

法人税の計算式は『課税所得金額×法人税率= 法人税額』となり、課税所得金額や法人の種類に よって課税率が変わります。

 法人の種類による、平成31年4月以降開始事業 年度の課税率は以下の通りになります。

●資本金1億円以下の普通法人・・・年間800万円以下 (適用除外事業者を除く):15% / 800万超:23.2%

●それ以外の普通法人・・・23.2%

●公益法人・人格のない社団等・・・年間800万円以下: 15% / 800万円超:23.2%

●特定医療法人・・・年間800万円以下(適用除外 事業者を除く):15% / 800万円超:19%

法人税の申告期限については『事業年度が終了した日の翌日から2カ月以内』が申告期限および 納付期限として

定められています。

そのため、事業年度が終わったらすぐに会計処理をし、法人税額を算定しなければなりません。

 

法人税の主な節税対策と その注意点とは?

(1)損金を増やす  

 法人税は課税所得金額に応じて納付額が増えるため、 損金を増やすという対策が考えられます。

その方法には 決算賞与を支給する、備品や消耗品を前倒しで購入 するなどがあります。

究極的には、課税所得金額が0 またはマイナスであれば法人税の課税自体しなくてよく なりますが、

融資の審査の際に不利になってしまいます。

(2)益金を減らす

  売上金の計上を翌期に繰り延べることで、益金を 減らして法人税を節税する方法があります。

売上の 計上基準によっては計上日が異なるためです。しかし、 原則として売上金の計上は

毎年継続して会社が採用 した計上基準で行わなければならないため、毎年できる節税方法ではありませんし、

合理的な理由がある場合しか計上基準の変更は認められません。

 (3)特別控除を利用する

 特別控除や特別償却の制度を活用すれば、税額が 控除されるため節税効果が期待できます。

特別控除の制度には、従業員の給与額を前年よりも 2.5%以上増やした場合等一定の要件を満たすと、

増加額の25%が法人税などから控除される制度(中小企業が対象)や、

中小企業が試験研究費を経費計上したときに一定割合を法人税額から控除する制度もあります。

特別控除制度はほかにもあるので確認しておき ましょう。

(4)決算期を変える  

 ある一定の時期に売上が集中する場合は、決算期を変えるという方法もあります。

決算期の変更は何度も できますが、納税のタイミングが変わることや定款の変更が必要になることなどのリスクがあります。

  いろいろな方法がありますが、翌期にしわ寄せがくる こともあります。総合的に見て適した方法を選びましょう。


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  違反するとどうなる? 経営者なら知っておきたい最低賃金法とは   2020-04-01

  

『最低賃金法』とは、使用者が労働者に支払う賃金の

最低額を定めた法律です。

各都道府県でその額は異なっており、従業員に対し、

最低賃金よりも低い賃金しか払っていなかった場合、

たとえ従業員との同意があっても、最低賃金との差額を

支払わなければいけません。

もし支払いを拒否した場合には、罰則が科せられます。

そこで今回は、経営者が知っておくべき最低賃金法について説明します。 


  最低賃金の理由と決定の仕方とは?

国が定める最低賃金は、労働者の生活を保障するという意味合いが強く、

使用者側には遵守することが求められます。

では、最低賃金はどのように定められるのでしょうか。

まず、厚生労働省の中央最低賃金審議会が最低賃金の目安を決定します。

中央最低賃金審議会のメンバーは、大学教授などの公益委員、労働組合の次長などの労働者委員、

さらには企業の代表取締役などの使用者委員で構成されています。

ここで決められた目安の額をベースにして、各都道府県の労働局に属する

地方最低賃金審議委員会がさらに審議を重ねます。

さらに今度は各都道府県の労務局長が精査を行い、最終的な最低賃金を決定します。

そのため、各都道府県によって最低賃金の額は異なるのです。

たとえば、東京都であれば、現在(2019年10月発効)は時給1,013円が最低賃金となっています。

最低賃金は、ここ数年、毎年2〜3%引き上げられています。

東京都では、2018年10月から2019年10月までは985円でしたが、以降は1,013円に改められました。

東京都や神奈川県が1,000円を超えているのに対し、青森県や鳥取県、熊本県や沖縄県など、

最低賃金が790円の県が15県もあり、地域格差は最大で223円となっています。

首都圏は物価が高く経済の動きが活発なことから、時給が高い傾向にあります。

特に東京に企業が一極集中しているため、改定の度に都道府県の中の最高額を記録しています。

政府は全国平均で1,000円を目指していますので、東京都や神奈川県では

1,150円〜1,200円まで上がる可能性があります。

ちなみに、最低賃金は毎年8月〜9月に決定し、10月から発効されるのが一般的です。

企業側は、常にこの改定された最低賃金を従業員の時給に適用させていかなければなりません。

また、最低賃金には産業や業種などを問わず、すべてに適用される『地域別最低賃金』と、

特定の産業に対して定められている『特定最低賃金』があります。

特定最低賃金が定められている業種は都道府県によってさまざまで、

北海道では乳業、東京都では鉄鋼業、沖縄県では糖類製造業などがあげられます。

厚生労働省のサイトでは、各都道府県における特定最低賃金の一覧が公開されているので、

自社の携わっている産業が該当するかどうかをチェックしておきましょう。


最低賃金を支払わない場合の罰則とは?
 
最低賃金は、正社員だけでなく、パートやアルバイトも適用の対象になります。

派遣社員に関しては派遣先の企業ではなく、派遣元企業が最低賃金に対応することになります。

最低賃金額を計算する場合、除外できるのは、臨時に支払われる賃金、

1カ月を超えて支払われる賃金、時間外・休日・深夜手当、精皆勤手当、通勤手当、

家族手当に限定されています。

従業員を時間給で雇用している場合には、単純に時間給と最低賃金を比較すれば問題ありません。
一方、月給の場合は、基本給と諸手当の合計を1カ月の平均所定労働時間で割れば

1時間分の給与を算出することができます。

従業員に支払っている給与を計算してみて、もし給与が最低賃金を下回っているのであれば、

会社側はすぐにこれを是正しなければいけません。

また、従業員から差額を請求された場合には、すぐに差額を支払う必要があります。

もし従業員に対して差額を支払わなければ、最低賃金法第40条違反として、

使用者は50万円以下の罰金に処されます。

また、従業員が最低賃金を下回っていることが原因で労働基準監督署に相談した場合、

労基署から指導が入る場合もあります。

また、弁護士に相談した場合は裁判にまで発展してしまう可能性もあるのです。

最低賃金は自社の従業員の生活を守るためにも必要なもの。

結果として会社を守るものでもあります。

常に最低賃金を意識して、必ず自社の管轄の都道府県の最低賃金を下回らない

給与を支払うようにしましょう。


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 多くの企業が導入している『中小企業退職金共済制度』    2020-03-18

   

  企業にとっては人材募集の際のアピールポイントになり、

従業員にとっては退職後の生活の安心につながる

『退職金制度』。

とはいえ中小企業が自社で制度を設けるのは簡単では

ありません。

今回は、そんな企業が活用できる

『中小企業退職金共済制度』を紹介します。


 国によるサポートを受けられる中小企業退職金共済制度

東京都産業労働局が発表している『中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)』によると、

東京都内の中小企業(有効回答数1,060社)のうち退職金制度を導入している企業は71.3%でした。

また、導入している退職一時金制度については、退職金制度を自社で整備している企業が64.4%、

次いで『中小企業退職金共済制度』を活用している企業が48.5%。

このほかに『退職金保険』(10.7%)、『特定退職金共済制度』(5.9%)を活用している企業も

見られました(複数回答)。

 この調査において約半数の中小企業が加入していた『中小企業退職金共済制度』は、

自社で退職金制度を設けることが困難な中小企業のためにつくられた、国の退職金制度です。

条件を満たしている中小企業であれば加入でき、さまざまなメリットが得られます。

 その仕組みは、企業が共済を利用して退職金を積み立てるというもの。

事業主と独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(中退共)が

契約を結べば、あとは退職者に直接退職金が支払われます。

企業は掛金を支払う必要がありますが、退職金の管理をする必要はなく、従業員から

法外な退職金を請求されるなどのトラブルに巻き込まれるおそれもありません。

これは大きなメリットです。

 また、掛金は法人企業の場合は損金、個人企業の場合は必要経費として全額非課税となることも

メリットの一つです(ただし、資本金の額または出資の総額が1億円を超える法人の法人事業税には

外形標準課税が適用)。

 このほか、加入後24カ月を過ぎると掛金の100%以上が支給となるため、

元金割れする期間は短くて済みます。会社が倒産しても支給されるため、

従業員は会社の業績に左右されることなく退職金を受け取れるということもポイントで、

利用価値が高い制度といえます。


  メリットの多い『中小企業退職金共済制度』ですが、もちろんデメリットもあります。

大きなデメリットといえるのが、12カ月未満で社員が退職した場合には退職金が支払われない

だけでなく、掛金も返ってこないところです。

また、24カ月未満で従業員が退職した場合も、元金割れとなるため、あまりメリットがありません。

離職率が高く、短期で人材が動いてしまうような業種は、自社で退職金制度を整備するほうが

メリットが大きい可能性があります。

 このほかにも、掛金を減額したい場合に手続きに手間がかかる、死亡退職金の額が低いなどの

デメリットもあります。もし、貢献度が高い社員に多くの退職金を出したい、

死亡退職金を支給したいと考えるのであれば、自社の退職金制度と併用するのも一つの方法です。

 退職金制度の導入は、従業員の満足度やモチベーションアップにもつながります。

手軽に始められる『中小企業退職金共済制度』を含め、自社に合う形での導入を

一度検討してみてはいかがでしょうか。


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 法人税が戻ってくる! 欠損金の繰戻しによる還付制度とは?      2020-03-11

   会社の期ごとの決算は、経営者にとって重要なことの

一つです。 

前期が黒字であっても、経営状態によっては今期も黒字と

は限らず、赤字になってしまうことも。 

そんなときは、『欠損金の繰戻しによる還付制度』で

少しでも欠損金の穴埋めを行いましょう。

この制度は、前期に出した黒字分と、今期の赤字分を相殺して、

前期に納めた法人税の一部を戻してもらえるという制度です。

そこで、適用される条件や還付金額の計算方法、制度を利用する上での注意点

などについて、説明します。        


欠損金の繰戻しで還付を受けるための条件

『欠損金の繰戻しによる還付制度』は、どの法人にも適用されるわけではありません。

適用対象法人は、青色申告書を提出する法人、災害損失欠損金を有する法人とされています。

ただし青色申告書を提出する法人については、解散事業年度に生じた欠損金および中小企業者等の

各事業年度において生じた欠損金を除き、平成4年4月1日から令和2年3月31日までの間に

終了する事業年度において生じた欠損金について適用が停止されています。

まず、青色申告書を提出する法人については、還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度まで

の各事業年度について連続して青色申告書で確定申告を行っている必要があり、

欠損金が発生した事業年度の青色申告書の提出を提出期限までにきちんと行っていること。

さらに、青色申告書と同時に『欠損金の繰戻しによる還付請求書』を提出していることも

条件になります。

なお、中小企業者等とは、普通法人のうち、各事業年度終了の時において資本金の額もしくは

出資金の額が1億円以下であるもの、または資本若しくは出資を有しないものと規定されています。

さらに、資本金が1億円以下であったとしても、相互会社及び外国相互会社や、

資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人の100%子会社である場合等は、

この制度は適用されないので注意しましょう。

ちなみに、災害欠損金を有する法人については、還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度

までの各事業年度について連続して確定申告を行っており、さらに、

災害欠損金が発生した事業年度の確定申告書または仮決算による中間申告書を提出していることと、

申告書と同時に『欠損金の繰戻しによる還付請求書』を提出していることが条件になります。

これらの請求に必要な『欠損金の繰戻しによる還付請求書』は、ひな形が国税庁のホームページで

公開されているほか、市販の申告書作成ソフトにも入っています。


戻ってくる法人税の計算方法とは?

自社に『欠損金の繰戻しによる還付制度』が適用される場合、いったい、どのくらい

法人税が戻ってくるのか知りたいところです。

還付請求できる法人税の額は、次の計算式で求めることができます。

還付請求できる法人税の額=

前期(還付所得事業年度)の法人税額×今期(欠損事業年度)の欠損金額÷前期(還付所得事業年度)

の所得金額

ただし、欠損事業年度の欠損金額は、分母の還付事業年度の所得金額が限度とされます。

具体例を出しながら、実際に算出してみましょう。

ある会社が前期で500万円の黒字を出して、75万円の法人税を納めたとします。

しかし、経営状態の悪化などによって、今期は200万円の赤字を出してしまいました。

この会社のケースを上記の式に当てはめると、『75万×200万÷500万』となり、

30万円の法人税が戻ってくることがわかります。

前期の黒字分500万円から今期の赤字分である200万円を引いた300万円にだけ、法人税がかかると

考えてみてください。

在の法人税率は1億円以下の普通法人の場合800万円以下の部分については15%なので、

300万円にかかる法人税は45万円です。

すでに75万円を前期に納めているので、その差額である30万円が戻ってくるというわけです。

ちなみに、『欠損金の繰戻しによる還付制度』はあくまで法人税にのみ適用されるものなので、

都道府県税や市町村民税などの地方税、その他、法人事業税、法人住民税などには適用されません。

ただし、欠損金が発生した年度にかかる法人住民税に関しては、『住民税の繰越控除』という制度が

あり、減税の処置を受けることができます。

一度、国税局のホームページなどをチェックしてみてください。

また、もう一つの注意点として、『欠損金の繰戻しによる還付制度』を利用すると、

税務調査が入りやすくなるということがあげられます。

これは還付申請を受けた税務署が、赤字の発生した年度における企業の欠損金額を調べたうえで、

法人税の還付手続きを行うためです。

もちろん、必ずしも税務調査が行われるわけではありませんが、一般的にその可能性が

高くなることが指摘されています。

『欠損金の繰戻しによる還付制度』は、赤字になってしまった企業にとっては、

法人税の一部が返ってくるありがたい制度です。

その一方で、税務調査によって細かい不備を指摘されてしまう可能性もあります。

制度を利用する際には、税務調査が入りやすくなるということを念頭に置いたうえで、

還付申請を行うようにしましょう。 


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 『ビジネスローン』の金利を経費として計上するには?   2020-03-04

   

   会社を経営するにあたって、資金繰りに頭を悩ませる

経営者も多いのではないでしょうか。 

資金調達の方法として、まっさきに思い浮かぶのは銀行

からの融資です。

しかし、審査が厳しいうえに、近年は貸し渋りの問題など

もあり、なかなか簡単には融資してもらえません。

そんなときに頼りになるのが、ビジネスローンです。 

今回は、そんなビジネスローンの税務・会計処理について説明します。


 ビジネスローンのメリットとデメリット

ビジネスローンは資金繰りの強い味方です。

通常のカードローンなどは個人向けのため、原則として法人の事業資金に使用することが禁じられて

いますが、事業者を対象としたビジネスローンであれば、まったく問題ありません。

ビジネスローンの一番のメリットとしては、銀行よりも審査が緩いことがあげられます。

銀行は審査が厳しく、場合によっては、資金を借り入れるには、経営状態を可視化した資料を用意し、

今後の事業の展望などを説明しなければならないこともあります。

しかし、ビジネスローンであれば、過去のデータに基づいた審査を行うだけで、融資を受けることが

できるのです。

また、早ければ数時間で審査が終わるので、即日で借り入れることができるのも大きな魅力と

いえるでしょう。

さらに、なかには、保証人や担保が不要のビジネスローンなどもあります。

そのため、「とにかく急場をしのぐための資金が欲しい」という経営者には重宝されているのです。

一方で、審査が緩かったり、保証人が不要だったりする代わりに、金利は銀行系の金融商品より

も高い傾向にあります。

これがビジネスローンの最大のデメリットといえるでしょう。

たとえば、ノンバンク系のビジネスローンであれば、平均して18%程度の金利となり、

月々、それなりの利息を払うことになります。


利息は経費として計上することができる

ビジネスローンの利息は多少高くても、『支払利息』や『利子割引料』という勘定科目で、

経費にすることができます。

ビジネスローンに限らず、銀行からの融資や公的融資など、事業目的で融資を受けた場合の

返済金の中の利息分は、経費にすることができます。

ただし、ローンの元本は経費にできないので、仕訳の際は、元本と経費を分けるようにしてください。

もちろん、経費にできるからといって、あまりにも高額な金利のビジネスローンはおすすめ

できません。

高い利息は経営をしていくうえで、大きな負担になるということを理解しておきましょう。

また、借入金自体は、返済する期間によって勘定科目が変わってきます。

 返済が1年以内のビジネスローンであれば、勘定科目が『短期借入金』となり、貸借対照表では、

『流動負債』として計上します。

一方、返済期間が1年を越えるものに関しては、勘定科目が『長期借入金』となり、貸借対照表では、

『固定負債』として計上します。

ビジネスローンは、基本的に1年で更新されるものが多く、ほとんどの場合は、『短期借入金』で

『流動負債』となるでしょう。

まとめると、ビジネスローンの返済を仕訳する際には、元本に関しては、

勘定科目に『短期借入金』か『長期借入金』を使用し、利息分に関しては、

『支払利息』や『利子割引料』を使用します。


保証料や事務手数料も経費計上可能

利息分以外にも、融資を受けるためにかかった諸経費なども経費として計上することが

可能になります。

たとえば、保証会社からの保証料が発生した場合は、その支払った保証料のうち

当期に該当する部分を『支払手数料』で、そして事務手数料も同様に『支払手数料』で

経費として計上できます。

また、印紙代などは『租税公課』として経費計上が行えます。

さらに、ビジネスローンのケースでは稀ですが、自身の所持している不動産を担保にして

融資を受ける際に発生する費用も経費にできます。

司法書士に依頼した分の報酬は、『支払手数料』や『支払報酬』として、

登録免許税は『租税公課』として、そして、登記簿謄本代は『租税公課』や『支払手数料』、

『雑費』という勘定科目で経費にすることが可能です。

つまりは、元本以外の融資にかかった費用の多くが経費として計上できるわけです。

ビジネスローンは資金に役立てることができるうえ、利息などを経費計上すれば節税にもなります。

急に資金が必要になったときなどに、上手に活用してみてはいかがでしょうか。


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  申告漏れと脱税の違い、国税局はどこで判断する?    2020-02-19

   2019年10月、人気お笑いコンビ・チュートリアルの

徳井義実さんの個人会社・株式会社チューリップが、

3年間にわたって得た所得を税務申告せず、国税局から

およそ1億1,800万円もの『申告漏れ』を指摘されました。

このケースは、あくまで『申告漏れ』であり『脱税』では

ないといわれていますが、では、『脱税』と『申告漏れ』

は何が違うのでしょうか。

 
今回は、このケースを手がかりに、企業における『脱税』と『申告漏れ』の違いや、

それぞれのペナルティについて、ご説明します。


 法律では『申告漏れ』と『脱税』を定義していない
 
   実は、『脱税』や『所得隠し』について、法律では明確に定義されていません。

あくまでメディアが便宜上、『申告漏れ』や『脱税』を使い分けているだけで、

実際には、案件の悪質度によって、科されるペナルティに違いがあるだけです。

そのペナルティの重さから、メディアが『申告漏れ』や『脱税』を判断しているに過ぎません。

納税額が少なかったり税金を納めなかったりした場合には、ケースによって、

4種類の加算税が課せられます。それぞれ見ていきましょう。

・過少申告加算税 

    期限内に申告は行ったが、納税額が少なかった場合には、追加で納めることとなった税金に

10%相当額の税金が加算される『過少申告加算税』が課税されます。

ただし、追加で納めることとなった税金が50万円(当初の申告納税額が50万円超の場合は

当初の申告納税額)を超えている場合、その超えている部分については15%になります。

なお、税務調査の通知前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。

また、調査の通知後でも調査による更正等予知前までは、税率が5%(50万円超は10%)となります。

・無申告加算税

   期限内に申告を行わなかった場合には、納付すべき税額に対して『無申告加算税』が課税されます。

税務調査の通知前に自発的に期限後申告を行えば納付すべき税額の5%ですが、

税務調査の通知後から調査による更正等予知前に期限後申告を行えば、50万円までは10%、

50万円を超える部分に関しては15%となり、さらに調査による更正等予知後になると

50万円までは15%、50万円超部分は20%となるなど、状況により税率が異なるので注意して

ください。

・不納付加算税

   源泉所得税の納付が遅れてしまった場合は、『不納付加算税』が課税され、源泉所得税の10%を

納めなくてはなりません。

・重加算税

   虚偽の申告をしたり、隠蔽したりといった不正な行為で納税を逃れたりした場合は、

本来の納税額の35~50%にもなる『重加算税』が課税されます。これが最も重いペナルティです。

重加算税が課される事態になった場合、ペナルティは金額だけに留まりません。

調査対象期間が延長されてしまうばかりか、税務調査の頻度も高くなるといわれています。

さらに、悪質だと判断された場合には、刑事罰として『10年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の

罰金』(法人税法159条1項)を科されることになります。

・その他

    ほかにも、税金の納付が遅れた場合には、納める期限の翌日から完納するまでの日数に応じた

『延滞税』、期限までに納付が間に合わず追って納税する場合には『利子税』が課税されます。

ちなみに、所得税および法人税の利子税は令和元年度は年1.6%で、完納までの日数を日割して

金額を導き出すことができます。


悪質だと判断されると刑事事件に発展

   徳井さんの場合、無申告だった所得税に関しては『無申告加算税』を、経費に関しては『重加算税』

を課せられ、そのほか、消費税や源泉所得税の分も合わせて、総額1億円を超える追徴課税を受けた

ことがわかっています。

一方で『悪意がなく、意図的ではない』と判断されたため、刑事罰にまでは至りませんでした。

今回のように追徴課税を課せられただけで、刑事処分までに至らず、いわゆる行政処分のレベルで

留まっている場合には、『脱税』とは呼ばず、『申告漏れ』と呼ぶのが一般的です。

国税局が『意図的に納税を逃れる悪質な場合』と認めて重加算税を課し、所得税法や法人税法違反など

で検察庁に告発して、初めてメディアでは『脱税』と表現します。

徳井さんのニュースに関しても、一部媒体では『脱税』と報道してはいたものの、『申告漏れ』

『所得隠し』と報じる媒体がほとんどでした。

一方で、同じような案件にもかかわらず、悪質と判断され、『脱税』と報じられたケースもあります。

2019年2月に、『青汁王子』としてテレビやネット番組に出演していた健康食品会社・メディアハーツ

の社長が、2年間で、約1億8,000万円もの法人税の納税を免れたとして、法人税法違反などの疑いで

東京地検特捜部に逮捕された事例です。

青汁王子は、2019年9月に懲役2年、執行猶予4年という判決を受け、メディアは一斉に『青汁王子の

脱税』として報道しました。

金額的には徳井さんとそこまで大きな差はありませんが、このケースの場合は、架空の広告宣伝費を

計上したなどの手口が問題視され、国税局は悪質と判断し、起訴しました。

繰り返しになりますが、国税局の捜査によって、金額はもちろん、手口や状況などから

意図的かどうか、悪意があるかどうかが判断されます。

その結果、刑事事件にまで発展したがゆえの『脱税報道』でした。

その点が、2019年に起きた二つの税金にまつわるニュースの大きな分かれ道だったのでは

ないでしょうか。

ただ、悪意がなかったとしても、『申告漏れ』も大きなペナルティを科されることに

変わりはありません。

税金の仕組みを理解し、納税の義務を果たすことが大切です。


※本記事の記載内容は、2020年1月現在の法令・情報等に基づいています。    

お困りのことはどんなことでも斎賀会計事務所までお気軽にご相談ください。

 

   ハローワークで優秀な人材を確保する! 効果的な求人票の書き方      2020-01-22

      

   採用コストをあまりかけられない中小企業にとって、公共職業安定所、

いわゆるハローワークは大きな味方です。

民間の求人サービスなどに比べると、希望する人材を確保しにくいという

イメージもありますが、多くの求職者の目に触れる『求人申込書』を

しっかりと書くことができれば、優秀な人材と巡り合う可能性も高まります。

 
ハローワークで自社に合ったよい人材を確保するための、求人申込書の書き方を紹介します。  

 

求人申込書の出来が明暗を分ける!?

現在、出張所や分室なども含めると、日本全国にハローワークは544カ所も設置されています。

雇用保険や失業認定、助成金関連など、ハローワークの仕事は多岐にわたりますが、

メインの業務はなんといっても、求職者への就職支援業務でしょう。

2017年度は新規求職者が495万人、新規の求人数は1,000万件を超えました。

また、1日の利用者は、全国で推計17万人以上にのぼるともいわれています。

このことから、非常に多くの企業や求職者が、ハローワークを活用していることがわかると思います。

ハローワークに求人を出すためには、まず『求人申込書』を作成する必要があります。

求人申込書はどこのハローワークにも置いてあるので、入手しましょう。

求人申込書に記載した内容は、そのまま求人票として求職者に提示されるので、

この求人申込書の出来不出来が、優秀な人材を採用できるかどうかの生命線になる

といっても過言ではありません。

民間の求人サービスなどでは、専門のスタッフが企業の特徴やアピールしたいことを、

人事担当者からヒアリングして求人票にしてくれる場合もありますが、

ハローワークではすべて自身で求人申込書を書く必要があります。

どのようなことを求人申込書に記載するのか、見ていきましょう。


まず、『事業所番号』や『事業所名』の欄を記入します。

法人の場合は会社の正式名称が必要ですし、個人事業主であれば、

屋号のほかに代表の氏名を記入する必要があります。

また、ハローワークは、求職者が各所に置いてあるパソコンで求人情報を検索できるほか、

インターネットでも情報を公開しています。

求人申込書にはインターネットへの公開を希望するかどうかの選択の欄もあるので、

多くの求職者に見てもらうため、よほどの理由がなければ公開したほうがよいでしょう。


入社後をイメージできる具体的な記載に

『職種』を記入する欄には、できるだけ具体的な内容を記入してください。

たとえば、単純に『営業』と書くよりも、『医薬品のルート営業』と書くほうが

求職者に内容が伝わりますし、より目に留まりやすくなります。

そして『仕事の内容』の欄には、どんな仕事をするのか、

採用して何をしてもらいたいかなどを記入していきます。

この欄は、求人申込書のなかでは一番重要なポイントになるので、

よく考えながら書いていきましょう。

求職者は、もちろん勤務時間や休暇、給与などの各種条件を中心に求人票を見ますが、

それと同等か、それ以上に重視するのが『仕事の内容』だといわれています。

なかには、『営業、電話・来客対応、書類作成を担当していただきます』など、

とてもシンプルな求人票も少なくありません。

果たして、自分が求職者だとして、この会社を受けてみたくなるでしょうか。

ほとんどの方が、仕事内容がよくわからない“得体のしれない会社”という

印象を持つのではないでしょうか。

『仕事の内容』の欄は、『職種』の欄と同様に、できるだけ具体的に書く必要があります。

たとえば、『書類作成』であれば『その日の営業結果を踏まえた報告書、

営業促進のための資料、顧客の管理資料などの作成』というふうに、何をするのかを明確にしましょう。

詰め込みすぎてもよくありませんが、判断材料となる情報が乏しいのが最もNGです。

求職者は、とにかく求人を出しているのがどんな会社なのかを知りたがっています。

仕事の内容はもちろんですが、社内の雰囲気や勤務環境など、アピールできるポイントがあれば、

できるだけ記入しておきましょう。

ただし、『アットホームな職場です』や、『誰にでもできる簡単な仕事です』などの

定番フレーズを使うのは要注意です。

近年、これらの言葉はブラック企業における求人票の常套句として認知されつつあります。

実情がそうではないにもかかわらず、安易にこれらの言葉を使って、

ブラック企業認定される危険性もあるため、できるだけ使わないようにしておきましょう。

職場環境が良いことを主張したいのであれば、もっと具体的に、『5年以内の離職率が10%』や

『平均勤続年数23年』など、数字を全面に出すことによって、アピールすることも可能です。

ほかにも、公開する画像(仕事をしている様子や、職場内の雰囲気がわかるもの)や各種条件など、

どのようなものが求職者に刺さるのかをよく考えなければいけません。

ハローワークに求人を出しても人が来ないという企業は、一度、求人票を見直してみてはいかがでしょうか。

    

 ※本記事の記載内容は、2019年12月現在の法令・情報等に基づいています。    

お困りのことはどんなことでも斎賀会計事務所までお気軽にご相談ください。

 

   労働基準法に違反したら、誰がどんな罰則を受ける?      2020-01-15

   労働基準法は、労働者を守るための法律です。

労働環境はもちろん、労働時間や賃金など、従業員を就労させる際の

細かなルールが定められています。

近年、働き方改革推進の流れもあって経営者は労働基準法に基づいて

会社を経営することが強く求められています。

労働基準法を遵守できなかったときは、労働基準監督署から

指導や是正勧告を受けることになります。

では一体、労働基準法に違反すると、具体的にどうなるのでしょうか。        


   労働基準監督署の調査は拒否できない

まず、企業が何らかの形で労働基準法に違反すると、労働基準監督署が本当に違反があったのかを調査します。

労働基準監督署とは、都道府県の労働局によって管轄されている厚生労働省の出向機関で、

現在、321署と4つの支署が全国に配置されています。

労働基準監督署は労働基準法のほか、最低賃金法や労災保険法など、労働にまつわる法律を

企業に遵守させるための機関で、事業所に対する監督・指導や、労災の原因究明・再発防止策など

を行っています。

調査は原則として事前の予告などはないことになっていますが、対象者が不在の可能性がある場合や、

事前に帳簿や書類などを用意しておく必要がある場合などは、電話連絡で調査予告日を告知するケースもあります。

また、文章による出頭要求書が届き、事業主が労働基準監督署に出向いて、調査を受けるケースもあります。

労働基準監督署の監督官による調査は、拒否することはできません。

再三調査を拒んだり、調査の際に虚偽の報告をしたりすると、検察庁に書類送検されることもあります。

監督官は多くの場合1名で対応し、身分を明かしたうえで、事業主または責任者との面会を要求してきます。

事業主はこれに応じ、監督官のヒアリングに対し、嘘偽りなく答えなければいけません。


指導後、報告を怠ると再調査になる可能性も

そして、調査の結果、法令違反や改善点が見つかった場合には、是正勧告や指導を受けることになります。

違反していた場合は、違反の内容と是正の期日が記された是正勧告書を、

違反ではないが改善する必要があるとされた場合は、指導票が交付されます。

これらの書類は、労基署に出頭して調査が行われたときはその場で、

会社で行われた場合は労基署に出頭するか、または後日郵送で受け取ります。

指導票が交付されたら指摘された事柄を改善し、改善状況について労働基準監督署に報告します。


報告を怠ると、再調査になる可能性もあります。

是正勧告書に関しても同様で、違反している部分を是正し、報告書にまとめて

労働基準監督署に提出しなければいけません。

是正して報告しない場合は再調査が入りますし、何度勧告しても是正しない悪質な場合は、

刑事手続に進み、検察庁に送検されることもあります。

この際、対象になるのは、事業主はもちろんですが、店長や部長、所長など、

その事業所で実質的に従業員への指揮監督を行う立場の人も、『使用者』として罰せられるおそれもあります。

さらに会社自体も罰則の対象になり、罰金を支払うことになります。

罰則は、違反した内容によって、

『1年以上10年未満の懲役または20万円以上300万円以下の罰金』

『1年以下の懲役または50万円以下の罰金』

『6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金』

『30万円以下の罰金』に分かれます。


実際は、労働基準監督署の是正勧告書を受けて是正する企業がほとんどなので、

罰則を受ける会社は多くありません。

厚生労働省が発表している労働基準監督年報によると、

2016年の労働基準監督署の監督数は、定期監督(計画的に実施)、

申告監督(労働者等からの申告により実施)、

再監督を合わせて16万9,623件にもなりました。


このなかには、意図せずに違反してしまっているケースも含まれています。


自分の会社が労働基準法を遵守できているかどうか、

経営陣や現場の指揮監督者たちと話し合ってみてはいかがでしょうか。

    

 ※本記事の記載内容は、2019年12月現在の法令・情報等に基づいています。    

お困りのことはどんなことでも斎賀会計事務所までお気軽にご相談ください。

 

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